地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

大学の授業は知識伝達だけではないのだろうけど

最近大学問題に関して書いたりして、
色々と他所のブログなど覘きながら
大学で何を教育すべきかとか考えていて
20年以上前に学生だった頃に
授業にがっかりしたことを思い出したので
ちょっと書いておこうと思う。

それは所属研究室の教授(つまり指導教官)が担当していた、
タンパク質化学の授業でのこと。
タンパク質化学に関する任意のテーマのレポートを出すことになっていたので
あまりきちんとした参考文献などを検索せずに思いつきで
ちょっと背伸びして
Dayhoffの経験的なアミノ酸置換確率の表(アミノ酸置換行列)と
遺伝コード上のコードの類似性に関する情報論的距離(ハミング距離)の間の
相関について検討したレポートを提出した。

Dayhoffのアミノ酸置換行列というのは、
あるアミノ酸が別のアミノ酸に進化的に置換される経験的確率を表わしたもので
その確率が高ければアミノ酸の化学的類似性が高く
確率が低ければそのアミノ酸間の類似性が低いことを示すと見なされる、
という話が授業で紹介されていた。
自分は当時分子進化に興味を持っていたので、
それをレポートのテーマに選んだ。

遺伝コード自体が類似しているために置換が起き易くなる効果を除去しないと
アミノ酸の類似性の評価にバイアスが掛かると考えて
それを検討することにした。
コード自体の類似性はハミング距離で表わすことを考えた。
ハミング距離というのは
文字列を別の文字列に変形する際に必要な置換回数で表わされ
たとえばAAA(リシン)からGAU(アスパラギン酸)への距離は、
2文字の置換なので距離2という感じになる。
アミノ酸は複数のコードで表わされるので
置換の全パターンの算術平均および幾何平均を求めて
Dayhoffの確率との相関を求めてみたところ
はっきりした相関は認められなかったので
ちょっと的を外したレポートになってしまった。

誰かが先行して考察済みではないかの文献調査もいい加減だったし、
結果もネガティブで冴えなかったので
もちろん高い評価を受けるとは期待していなかったので
単位を貰えて文句を言う筋合いではなかったとは思う。
しかし「こんなんあかんで」とか、
小言でも良いからコメントをもらえたら違ったのだが、
完全にスルーされてしまった。
研究室のテーマとは関係なかったら
授業のレポートなんか無視されるのかと本当にがっかりした。

お題目はともかくとして、
結局のところ大学の授業も知識伝達ばかりなのが標準なのだろう。