今朝の読売新聞の科学欄にシーラカンスのゲノム解読の話が出ていた。
遺伝子レベルでも進化速度が遅いとか、
シーラカンスよりもハイギョの方が四足動物に近いとか紹介されていた。
元は4月18日付のNatureに発表された論文
C.T.Amemiya et al.,
"The African coelacanth genome provides insights into tetrapod evolution”
Nature, 496, 311-316.(18 April 2013)
http://www.nature.com/nature/journal/v496/n7445/pdf/nature12027.pdf
これまで自分は気がつかなかったが4月中に幾つかの新聞でも紹介されていたようだ。
それで面白そうに思ってネット漁りをしていたら
ちょっと気になることに出くわした。
というのは2011年(平成23年)12月28日付で
遺伝研が「生きた化石シーラカンスの全ゲノム塩基配列を解読」
http://www.nig.ac.jp/assets/images/research_highlights/PR20111226.pdf
というプレスリリースを出していたのだ。
遺伝研だけでなく共同研究者の東工大の岡田典弘の研究室の方でも研究紹介で
「生きた化石シーラカンスの全ゲノム塩基配列を解読」
http://www.nig.ac.jp/Research-Highlights/986/981.html
http://www.evolution.bio.titech.ac.jp/research/coelacanth/coelacanth_40.html
と発表している。
日本のグループも論文化は進めていたのだろうけれど
残念ながら論文では米国に先を越されてしまったようだ。
良く見ると遺伝研のプレスリリースには
「シーラカンスについては米国ブロード研究所でも東アフリカ・コモロ諸島産の個体を材料にゲノム解読を進めており、論文としての発表は行われていませんが配列情報を公共データベース(DDBJ/EMBL/GenBank)から公開しています。
本研究グループでは今後さらに詳細な解析を追加し論文発表を行う予定にしておりますが、絶滅危惧種でもあるシーラカンスの重要性にかんがみ、現時点で得られた研究成果を早期に公表することにしたものです。」
と書いてあって今回Natureで発表したグループの活動に触れている。
一方、今回のNature論文では遺伝研や東工大のことは触れていない。
しかし良く見るとNature論文の共著者の中には
遺伝研集団遺伝研究部門の"Kenta Sumiyama"(隅山健太)の名前が見受けられる。
一方遺伝研のプレスリリースを見ると、こちらの問合せ先には
比較ゲノム解析研究室の藤山秋佐夫となっている。
同一の研究組織内にライバルグループが存在しているのかも知れないが、
研究マネジメントは一体どうなっているのだろう?