地獄のハイウェイ

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ニセ科学って本当に「科学の権威」を利用しているのかな?

はてな匿名ダイアリーに「ニセ科学小考」という記事があがっている。
http://anond.hatelabo.jp/20130517015611
一般人というか非専門家は科学のことを確立された知識と見なしているから、
最先端の科学だという触れ込みのニセ科学に騙されてしまうので、
科学というものが専門家による集団的営為によって確からしさを増すプロセスなのだと、
そういう啓発をした方が良いというのがその主張だ。

自分も以前はニセ科学が「これは先端科学だから正しい」のだと偽装して
科学の権威に弱い人達にをたらし込んでいるのだと考えていた。
しかし原発事故以来の御用学者と一部のカルト的反原発運動の対立を見ているうちに
今ではかなり考えが変わった。
御用学者に丸め込まれる人と一部の怪しげなカルト的反原発の嵌る人だと
ニセ科学に騙される人と似ているのはどちらかといえば後者の方のように思う。

いわゆるニセ科学の推進者と言うか宣伝している側の人材には
主流の科学分野で業績を上げてキャリアを積んできた者は少ない。
もちろん例外がないではないが、
国内の主要大学(旧帝大など)で博士号を取得した人材は稀だし
例外的にかなりのキャリアがある場合でも、
そのニセ科学とは関係の薄い分野であることが多い。
それは当然のことで何故なら
ニセ科学が対象としていると称している領域に対応する
既存の研究分野で専門家であれば
もしもニセ科学に加担しようものなら業界から袋叩きに合って
当該分野で再びポジションを得ることなど叶わなくなる。
それは研究者としてキャリアの自殺を意味する。
そんな危険を冒そうという専門家を見つけるのは大変だ。
だから当然のことニセ科学の「権威」は科学界の外部にいる人間がほとんどだ。

またニセ科学はその定義からし
「科学者コミュニティ内でのコンセンサスが得られている事柄に反した主張」をするので
当然のこと既存のスタンダードな学説を否定することになる。
そのために動員されるレトリックが
「既存の学説を乗り越えた最先端の科学」なのだろう。
そのためかニセ科学の主唱者は自らを
ガリレオのような権威に抗して科学革命を成し遂げた大科学者に
なぞらえることが珍しくない。
あるいは国内の科学界は学閥支配によって古い考えで鎖国している中で、
自分達は海外の最先端の知識を導入しようとしているのだと吹聴するのだ。

こういった特徴が見られるニセ科学に惹かれる人は
既存の権威を尊ぶよりも先鋭的な革命家に憧れる傾向にあるのではないだろうか。
そういう人であるならば、
主流の専門家の忠告など聞く耳を持たないのも仕方あるまい。
ニセ科学に親近感を覚えやすいのは、
既存の学説が打ち倒される可能性を夢見るロマンチストや
体制から疎外され見捨てられたとのルサンチマンを抱く者だろう。
それほどでもなくても既存の科学界(特に医学界)に不信感を持っている場合は、
分り易いニセ科学的な言説に引っ掛かりやすい。
ニセ科学は科学を標榜しているものの、
科学万能が楽天的に信じられた時代の空気の下よりも
反科学的なカルト宗教などと同じような心理的土壌に育つのではないだろうか。

このようなニセ科学と対照的に、
御用学者のような公認された科学の内側にいる専門家による洗脳工作では
旧帝大の教授だったり政府公認の学界の権威だったりすることが
すごくポジティブに作用していると言えるだろう。
御用学者の洗脳に引っ掛かりやすいのは、
主流の科学に不信感を抱く人ではないだろう。
学界の権威がスタンダードな科学的常識ではどうなっているのかと
説明してあげればニセ科学から素直に抜け出せるとしたら、
こういう権威に盲従するいわゆる権威主義的パーソナリティーの人だろう。