地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

もの凄いニュースなのに勿体ない!

NASAが「宇宙生物学上の発見」との予告をしていたため、
宇宙人とかのSFチックな想像をしていた人達もかなりいたようだが、
リンをヒ素で代替する細菌が見つかったらしい。
http://www.sciencemag.org/content/early/2010/12/01/science.1197258
がっかりした人達には申し訳ないが正直これはもの凄い発見!

リンの替わりにヒ素を使うというのは、
例えば生物の「エネルギー通貨」と呼ばれる
ATP(アデノシン三リン酸、adenosine triphosphate)の
リン酸基の代わりにヒ酸基が入ること。
そうなるとそれは
アデノシン三ヒ酸(adenosine triarsenate)となるから
それはもはやATPとは呼べないものであるわけ。
同様にDNAやRNAといった遺伝物質の基本単位であるヌクレオチドは、
ヌクレオシドとリン酸が結合してできたものだから、
ヌクレオシドとヒ酸でできた物質は
ヌクレオチドではないわけで、何と呼べばいいのだろう?
リンをヒ素で置き換えたもはやDNAと呼べない遺伝物質で生きる生命!
ヒ素を食べて生きる」式の紹介ではこのインパクトが伝わりきらない。
(酸素の代わりにイオウで呼吸する細菌程度の常識的な話に聞こえてしまう)
これまでの常識を破る凄い発見だ。

どうやら好塩性細菌ハロモナスと近い細菌のようなので
リン型遺伝物質からヒ素型遺伝物質への切替能力を持つように進化したのだろうが、
それはそれで進化のステップとしても凄すぎる。

もっと生物学上の重要性を強調して広報すべき発見なのに、
NASAの予算獲得の手管なのだろうけど、
これを地球外生命探査に結び付けてだけ報道するのは、
とても勿体ない。