地獄のハイウェイ

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尖閣ビデオ流出で新しい情報はあったのか?

尖閣ビデオ流出事件に関して色々と騒ぎになっているが
ビデオの流出が本当に自首してきた海上保安官によって行われたとして、
それが国家公務員の守秘義務違反にあたるかどうかとちょっと考えてみた。

「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」という
国家公務員法第百条の守秘義務についてつらつら考えるに、
中国漁船が海上保安庁の巡視船の停船勧告に従わずに船をぶつけたということは
9月8日の中国漁船の船長の逮捕の直後から報道されていたことで
既に公の媒体で発表されていたことである。
例えば9月9日付けの琉球新報の記事では、
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-167366-storytopic-1.html
尖閣諸島久場島から北西約15キロ付近の日本領海内で、中国漁船がかじを左に大きく切り、立ち入り検査を実施するため停船を命じ追跡中だった巡視船「みずき」の右舷に衝突させるなどし、海上保安官の職務執行を妨害した疑い。船長は逮捕時、中国語で逮捕容疑を読み上げられると、うなだれた様子で黙ったままだったという。
 第11管区海上保安本部によると、中国漁船は巡視船「よなくに」が領海外に出るよう退去命令を繰り返した際、網を船上に揚げて航行を開始。よなくにに接触後、追跡していたみずきにも接触した。」

とある。第11管区海上保安本部が発表したものをもとにした記事のようだ。
また9月8日付けの内閣官房長官記者発表でも
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201009/8_a.html
海上保安庁が8日未明、公務執行妨害の容疑で、魚釣島の北方約9キロメートルの海上に停留中の同漁船船内において、同漁船船長に対して逮捕状を緊急執行いたしました。我が国としては、違反の程度、対応等を考慮の上、我国の法令に基づいて厳正に対処していくこととなります。この公務執行妨害の中身でありますけれども、尖閣諸島周辺海域警戒中の海上保安庁巡視船「みずき」が、同諸島周辺の領海内で、違法操業中の中国漁船に対し、立ち入り検査を実施するため、停船を命じつつ追跡をしておりましたら、同領海内において、同漁船船長が当該漁船を巡視船「みずき」に衝突させるなどをして、同巡視船に乗り込む海上保安官の職務の執行を妨害した、そういう事案でございます。」
となっている。

自分が流出ビデオなるものを見た印象では、
これらの記者発表と矛盾はないというか
ビデオをもとに記事なり調書なりをまとまめるなら
これら記事や記者発表のようになるよなぁという気がする。
ということは流出ビデオを見ても、
ほとんど何も新しいが情報なかったということだ。
記者発表を裏付けただけで、
何らかの秘密の暴露が行われたとは言えないと思う。

喩えで言うなら、
すでに内容が報道されている共同声明について
共同声明を読み上げている映像を見たような感じだ。
喩えを続けるなら、
秘密の外交交渉の内幕をリークしたのなら
守秘義務違反にあたるだろうが、そういうものではない。

またビデオ流出以前にも報道各社が
関係筋の話としてあれこれ紹介してきた際にも
関係者の誰も守秘義務違反には問われていない。
つまり映像の内容について報道関係者にしゃべっても
守秘義務違反にはならないのだから、
流出したビデオで何か秘密を暴露したことになるのは変だ。

記者発表なら正規の手続きを踏んでいるはずだが、
今回の件ではそういう手続きを踏んでいないので
問題が全くないとは言えないが、
守秘義務違反とは言えないのではないだろうか。