地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

○○は日本の生命線

行政刷新会議による科学技術予算の削減に反発する
理研の野依理事長の「科学技術は我が国の生命線」という発言を聞いて
なんとなく戦前の「満蒙は日本の生命線である」を思い出した。

これは松岡洋右による「満蒙は我国の生命線である」が元ネタで、
原文を探してみたところ次のサイトで見つける事ができた
http://sizuka.at.infoseek.co.jp/matsuoka/manmo-9.htm

一流の弁舌家であった松岡洋右だけあって
ノーベル賞学者の宣言文よりもずっと迫力がある。
また修辞的なものかもしれないが
「もとより満蒙開発に当つて三千万の支那人を無視することの出来ないことは云ふ迄もない。飽くまで其の了解を求め、これと提携し共存する意味に於て進まなければならない。」
とか
「勿論我国の満蒙に於ける施政に就いて神ならぬ以上時々失敗のあるのは已むを得ない。又満蒙現場に居る同胞中にも吾々の誇り得ぬ分子も存在し、我国の反省しなければならぬ点もある。」
のような譲歩や反省の言葉が述べられているのを見ると
何の反省も譲歩も示していない著名科学者の声明文と比べて
コミュニケーション・センスの差を感じてしまう。

更に、若者に関して「海外流出を惹き起こすという深刻な結果をもたらす」
とか言っている科学者達の声明は、
ドメスティックな利己主義に囚われていて、みみっちい感じがするの対して
松岡が世界史的な観点(これに同意するわけではないが)から
「更に一歩を進めて理想を云へば、平面的の欧洲文明に対立して居る立体時の東洋文明こそ、人類永遠の幸福を表徴して居るものであり、而してこの東洋の立体的文明を復興し、拡大して世界人類をしてその恩典に浴さしめ、其の福祉を増進せしむる使命を負つて居る者は日支両国民であり、其の光輝を発揚せしむる地域は実に満蒙であると信ずる。」
と述べているのは気宇壮大というべきだろう。