地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

科学技術政策

博士課程進学者の減少について

国内の大学院で博士課程への進学者数が減少していることについて、我が国の研究力の低下に繋がることを心配する声を一部で見掛けたりする。そういう背景もあってなのか昨年末には文部科学省が博士課程進学者1万5000人に生活費相当額の支援を行うという政策を…

フリーはつらいよ

先日、とある学会の懇親会で「無所属」(学会発表でそのように書いておられた)研究者の人とちょっと話をした。論文を投稿しても中々受理されないどころか、「きちんと査読に回してもらってるか疑ってしまうようなこともある」と嘆いておられた。懇親会で話…

楽園変ジテ無法地帯ト化ス

昨日公表された理研の研究不正再発防止のための改革委員会の 「研究不正再発防止のための提言書」 http://www3.riken.jp/stap/j/d7document15.pdf を見ていると理研のガバナンスの欠如が厳しく指摘されている。 小保方のユニットリーダーへの応募書類が提出…

「口を出さずに金だけくれ」は通用しない

今回のSTAP事件に関連して 菅官房長官や理研に対して文部科学省を通じて説明を要求したり、 下村文部科学大臣が論文の撤回を期待した発言したことに対して 「研究現場への政治介入の危機」とみなす意見がある。 (例えば http://d.hatena.ne.jp/scicom/20140…

日本の科学系の人材育成を憂うならバイオ関連予算を減らせ

これまで何度も言っているのでちょっと食傷気味なのだが 基本は「バイオは産業界での就職は極めて困難」 https://katsuya-440.hatenablog.com/entry/56410306 あるいは「バイオ系博士の窮乏はアカデミアの自業自得かも」 https://katsuya-440.hatenablog.com…

「京」陥落

スパコン「京」が2位に転落したという報道があった。 この種の首位争いは、いずれ新型機に抜かれて 首位の座を明け渡すものなのでニュース自体は当然だろう。 さてそれで例の「仕分け」の時に、 蓮舫の「2番じゃダメなんですか?」に過剰反応していた人達は …

一流の片手間vs.二流の全力

有力な研究者になると複数のプロジェクトに従事していたりするし、 複数のポジション(大学と理研とか)を兼務していることも珍しくない。 必ずしも悪いことだとは思わないが日本全体の研究効率を考えると 無条件に肯定できるものでもないと思う。 単純なモ…

大阪市のOBIへの支援打ち切り報道について

大阪バイオサイエンス研究所(OBI)への補助金の打ち切りを 大阪市が検討しているらしい。 1980年代に欧米の後塵を拝していた日本のバイオサイエンス分野の 突破口を開く存在として周囲の期待を集めていたこともあって、 OBIと隣にある蛋白工学研究所(PERI…

研究者は個人事業主でやれるか?

たまたま理研のオミックス基盤研究領域の バイオインフォマティクス解析のテクニシャン(?)の募集をみたら 「契約形態は、個人事業主との契約が原則」とあった。 http://www.osc.riken.jp/news/081225/qual01.html どうしても今ある体制の中でしか発想でき…

「なんの役に立つんですか?」にびびってどうする?

「最果タヒ ノ 森山森子」というブログの “「なんの役に立つんですか?」の暴力性”http://d.hatena.ne.jp/m0612/20100414/p1 という記事が話題を集めているようだ。 その主張の素朴さにはちょっと微笑ましくも感じるのだが、 一方で幾つかの違和感を覚えるの…

自然科学の発展に寄与している大学は日本で179校

科学技術政策研究所の「日本の大学に関するシステム分析」(2009年3月) 概要( http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/rep122j/pdf/NISTEP_REPORT_No.122a.pdf) 全文( http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/rep122j/pdf/NISTEP_REPORT_No.122.pdf) とい…

本気で研究したかったら日本の科学の将来なんて心配するな

若手研究者の生存競争云々とかの話題になると 「日本の科学の将来を憂える」とかそういう意見が出てくる。 そういう心配をする人の気持ちが判らない訳ではないけれど、 そういうのはある種の業界「村」的な発想であって、 これからチャレンジしようとする若…

明るい未来って「地上の楽園」みたいなものだろう

堀川大樹さんという方の「日本のアカデミアの将来はきっと明るい」 http://d.hatena.ne.jp/horikawad/20120106/1325857642 という記事を読んだ。 競争激化で若手専任研究者のレベルが上がっている上に 博士課程への進学率が下がって研究者適性のない進学者が…

医療産業が繁栄≒医療費が高騰

昨日、内閣官房医療イノベーション推進室長の中村祐輔が辞任し 来年4月からシカゴ大学に研究拠点を移すというニュースがあった。 省庁の壁に阻まれて思うようにならなかったということのようだ。 それでネットで少し検索したところ、 サイエンスポータルでも…

国策としての科学コミュニケーションは失敗なのだと思う

ちょっと「国策」と「科学コミュニケーション」で検索すると 「サイエンスコミュニケーション国際シンポジウム「科学を語り合う」」 http://www.life-bio.or.jp/topics/topics212.html というのが引っ掛かってきた。 どうやら科学技術政策研究所がブリティッ…

科学者のパトロン・クライアント関係について考える

先日、政府と科学者の関係をパトロン・クライアント関係であると書いたが、 ネットで検索したら同じようにパトロン・クライアント関係として政府と科学者の関係を見ているものがあった。それは田中一郎という研究者の「ガリレオと処世術としての自然研究 : …

どうして科学者は統治者目線になりがちなのか

神保哲生という人がやっている「マル激トーク」というところに、平川秀幸をゲストにした「なぜ「専門家」は信用できないのか」というのがあった。 http://www.the-journal.jp/contents/jimbo/2011/04/post_107.html その中で注目したのは 「例えば科学者の「…

科学が本当に価値中立なら科学者への給料は生活保護みたいなもんだ

誤解されないように最初に宣言しておくが 自分は科学が価値中立的だとは全く思っていない。 近代社会の中で「善」とされるもであるからこそ、 それを推進しようとする社会的努力が行われていると信じている。 従って近代社会の価値規範を是としない立場(例…

定点観測-学会連合

これまでも学会連合での声明について取り上げてきているが、 https://katsuya-440.hatenablog.com/entry/62680571https://katsuya-440.hatenablog.com/entry/63771571https://katsuya-440.hatenablog.com/entry/64233462 昨年暮れの30学会から34学会に増えて…

日本のトップ5大学

これまでも世界の大学のランキングを発表しているTimes Higher Educationが "Top 100 universities by reputation"というのを発表したそうだ。 http://www.timeshighereducation.co.uk/world-university-rankings/2010-2011/reputation-rankings.html reputa…

日本の科学って

最初に断っておくが自分は日本人の科学者が活躍すると嬉しいし、 頑張っている研究者やその予備軍に対してもエールを送りたいと思っている。 ただ、今年のノーベル化学賞の根岸英一さんのように、 日本人であっても帝人を休職して米国(ペンシルベニア大)で…

学会連合、生物系合流、情報系離脱

これまでも学会連合での声明について取り上げたことがあるが、https://katsuya-440.hatenablog.com/entry/62680571https://katsuya-440.hatenablog.com/entry/63771571 7月末の29学会から30学会に増えてまた声明を出したようだ。 「日本国家存立の基盤となる…

ある羊頭狗肉の告白

林幸秀「理科系冷遇社会」(中公新書ラクレ)というのを読んだ。 表題はかなりどぎついものだが、それが焦点と言うよりも、 どちらかというと日本の科学研究の現状を白書風にまとめたもの。 それもそのはずで著者は 2003年、文部科学省科学技術・学術政策局…

研究開発の秘密は官公庁の守秘義務基準じゃ守られない

先日、尖閣ビデオ流出事件のことで、 守秘義務違反には当たらないのではと書いたが 尖閣ビデオ流出で新しい情報はあったのか? - 地獄のハイウェイ 法務省あたりの見解だと「守秘義務違反」に当たるそうだ。 その一方でビデオ流出以前にビデオの内容について…

科学技術者の潜在的政治力

先日もTPP(Trans-Pacific Partnership)について触れたが、 菅内閣は基本方針を今日の閣議で決定したそうだ。 菅首相は「平成の開国」と強調しているそうだが、 早速、農業関係者からは反対の声が上がっているようだ。 それでふと日本の農業人口ってどの位…

TPPとかFTAを語らず科学技術立国を謳う愚

偏見かもしれないが科学技術の分野では相変わらず 「科学技術こそが日本が国際社会で生き残るためには必要」という立論で 予算をよこせという話が多いようだ。 それが必ずしも間違っているとは言わないが、 日本の将来を支えるために科学技術が必要だという…

オンリーワンを目指すべきじゃなかったの?

少し前のことになるが今年のノーベル化学賞受賞者の鈴木章氏が 「研究は1番でないといけない。"2位ではどうか”などというのは愚問」と言ったそうだ。 それでふと思い出したのだが数年前のノーベル化学賞受賞者で、 「ナンバーワンよりオンリーワン」とか言っ…

年度に縛られない研究費の提案が出ている

ある学会からの案内で知ったのだが 科学技術政策研究所の第2調査研究グループの 茶山秀一さんという方が 「国費による研究開発における信託の活用の可能性」という論文を公開されている。 http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/dis064j/pdf/dis064j.pdf …

学会連合

以前にも学会連合での声明について取り上げたことがあるが、 分野横断的な科学コミュニティを! - 地獄のハイウェイ 20学会から29学会に増えてまた声明を出した。 「科学・技術による力強い日本を実現するための大学・研究機関の強化と予算措置を求める」 ht…

バイオ分野に優秀な人材を集中しない方が良いかもしれない

製薬業界において「2010年問題」と呼ばれる問題があることは、 ご存知の方も多いだろう。 これは2010年前後に大手メーカーの主力製品の特許切れが集中するために、 製薬メーカーの経営が苦しくなるかもしれないという話だ。 大型新薬が生まれにくくなってい…