地獄のハイウェイ

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足利事件DNA鑑定は酷い

既に報道されているように、
足利事件17年19年前のDNA鑑定の間違いが色々と取り沙汰されている。
それは当時の技術では同一のパターンなら数百人に1人の精度だったのだが、
近年はその精度が向上したので別人であることが分かるようになった、
というような報道がなされているが、
今朝の読売新聞に掲載された、
当時証拠採用されたDNA鑑定の電気泳動のパターンの写真を見て
そういう説明が全くのデタラメだということが分かった。

当該の写真を見て正直びっくりしたのが、これは酷い鑑定だ。
菅家さんの方ではっきり出ているバンドが
犯人のものとされる方では、はっきりしていないのだ。
この濃度であればデンシトメータとかで読み取ってデジタル処理をしても
恐らくバンドは検出されないはずだ。
ここにシグナルを見出すほどに画像をエンハンスしたら
他のバンドがないとされている部分でも多分シグナルが出てくるだろうレベル。
つまり同一パターンであると判断するのが難しいものだ。
ここから言えるのは当時の技術がどうであろうと、
犯人が菅谷さんと同一人物の可能性を
DNA鑑定から否定することができなかったというべきだ。

報道で言われているDNA鑑定の精度とは、
明確に同一パターンであると判定された際の
同一型の出現頻度いわば個人識別の弁別力(あるいは分解能)の話だ。
しかし、いくら弁別力が高くても誤判定の確率が低くなければ
同一人であることの証明として使用されるべきではない。
そして判別の根拠となるデータ自体のクオリティ(S/N比とか)が低ければ
誤判定の確率は低くならないのだから
例えばサンプルの取得状況であるとか保管状況とか
そういったところに欠陥があるデータは
通常人なら誰でも疑いを持つべきでそれをもって証明されたとすべきでない。
当時の裁判官がそこまで見ていれば
足利事件が冤罪を生むことはなかったのではないかと思う。