地獄のハイウェイ

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御用学者はやっぱり信用できない

原子力規制委員会の田中俊一委員長が
SPring-8定量的な分析はできないのです。」
と発言したと聞いて驚いて調べてみたところ、
本当にそういうデタラメを言っていた。
発言は平成27 年7月1日の「原子力規制委員会記者会見録」
http://www.nsr.go.jp/data/000112893.pdf
の11ページに確かにあった。

曰く「それから、あなたが言っている組成がどうのという講釈を、SPring-8(スプリングエイト)とか電子顕微鏡で測ったこのスペクトルは、私もこの分野は専門家だから、間違いですよ。そもそもSPring-8(スプリングエイト)は定量的な分析はできないのです。私はもう10年以上SPring-8(スプリングエイト)を使って実験をやっていたけれども。そもそもK殻とか、L殻とか、M殻とかという核外電子が放射光というエックス線ではじかれて特性エックス線が出るのだけれども、それはK殻か、L殻か、M殻かということでクロスセクションがみんな違うのですよ。
 そういうことを全部きちんと評価できないで、そういうものをやっているというのは、科学者としては、とてもではないけれども、私にはまともな科学者とは思えないです。(後略)」

(太字による強調は引用者によるもの)

田中俊一と記者とのやり取りに出てくる農水省のデータというのも探してみたが
南相馬市における玄米の基準値超過の発生要因調査」
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/fukusima/pdf/150526_youin_chosa.pdf
というのにSPring-8を使った分析があってそれと対応するようだ。
これの10-11ページに蛍光X線のスペクトルがあって
「一方、セシウム(赤囲み)とバリウム(緑囲み)の濃度について、土壌中ではバリウムの濃度が高いことが知られているが、稲の葉やもみ、ダスト粒子から選別した放射性物質を含む粒子は、いずれもバリウムよりセシウムの濃度が高く、土壌由来の粒子とは異なるものであった。」
とある。
確かにCsとBaのピークがダストでは皆Csの方がBaよりも強いのに
ファランスの土壌ではBaの方が強い。
これは採取されたダストはレファランスになっている土壌由来ではないことを示唆している。
田中俊一はクロスセクションがなんとか煙に巻こうとしているが
測定条件を揃えてピーク強度を比べた場合に組成の違いを反映するのは当然だ。
まともでないのは田中俊一の方だ。

そもそもSPring-8定量分析ができないなんて全くの口からのでまかせだ。
SPring-8での蛍光X線を使った定量分析は実施されている。
例えば次のようなものがある。
https://user.spring8.or.jp/resrep/?p=3301
定量分析のためには各種の補正が必要で
そう簡単ではないのは確かだが
「そもそもSPring-8(スプリングエイト)は定量的な分析はできないのです」
という田中俊一の発言はまったくの嘘である。
これだから「御用学者」は信用できない。