地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

科学コミュニケーション

科学哲学は科学を理解するのに役立つのか?

科学哲学と科学者との関係について「科学哲学は鳥類学が鳥にとって役に立つ程度しか科学者にとって役に立たない」(”The philosophy of science is just about as useful to scientists as ornithology is to birds.”)という比喩がよく知られている(R.ファ…

科学者が科学について語るときは専門家を尊重しろよ

小野昌弘という免疫学者が 「放射能恐怖という民主政治の毒(終):問題の解決に向けて」 http://bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20151231-00053002/ という文章を書いているので読んでみたが 非常に頭が痛い代物ですごく嫌な気分がした。 曰く 「放…

御用学者はやっぱり信用できない

原子力規制委員会の田中俊一委員長が 「SPring-8は定量的な分析はできないのです。」 と発言したと聞いて驚いて調べてみたところ、 本当にそういうデタラメを言っていた。 発言は平成27 年7月1日の「原子力規制委員会記者会見録」 http://www.nsr.go.jp/da…

科学の進歩へ寄せる信頼は科学者の間なら普通だろうけれど

一昨日、感想を書いた『世界を騙しつづける科学者たち』を読んで思ったのだが、 この本で槍玉に挙げられているような科学を捻じ曲げる一部の科学者が 環境保護主義的な規制に反対する心情の根っこには市場原理主義もあるが同時に、 「環境問題はテクノロジー…

「科学者ヘイト」なんてあったの?

サイエンスライターの片瀬久美子という人が 「科学者ヘイト」というのがあったとか言っているそうだ。 http://togetter.com/li/786860 その中で「原発事故後の「科学者ヘイト」も凄まじかったんですよ。」 とか言っているがそんなのあったのだろうか? 確か…

科学者への不信について、原発事故とSTAP事件

小野昌弘という人の 「放射能恐怖という民主政治の毒(11):煽られる不信・くすぶるデマ」 http://bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20150222-00042905/ という記事を読んで少し違和感を覚えた。 福島の原発事故でいわゆる御用学者というか原子力専門…

科学が誤解される現場

垂水雄二『科学はなぜ誤解されるのか』(平凡社新書)を読んだ。 タイトルに掲げられた問題についてはそれほど掘り下げられているわけではなかった。 著者はドーキンスなどの進化論関係の翻訳などで知られる科学ライターなので 第四章「誤解されるダーウィン…

iPS臨床試験の広報に見る不誠実さ

STAP事件の余波を受けて理研CDBの解体云々が取り沙汰されているので CDBが実施予定のiPS細胞を使った臨床試験についてちょっと調べてみた。 概要は理研広報のページや臨床試験の特設ページなどにあるが それらを見ていてちょっと疑問を持った。 http://www.r…

論争しない科学者って

STAP事件絡みのネットの記事を見ていてふと思ったのだが、 同業者が研究不正を追及しないことに関して 「科学者は他人の研究報告を批判しても業績にならないのでしない」式の言説を 見掛けることが割とある。 しかしこれは素直に受け取って良いのだろうか? …

研究不正事件渦中のサイエンス・コミュニケーション

今回のSTAP細胞事件でネット上の反応を眺めていると 専門的な知識のある発生生物学や再生医療分野の専門家の反応が乏しく、 専門外の分野の研究者などの反応が手厳しく、 そして一般的な市民の反応が薄いという いわばドーナッツ状の分布になっているように…

STAP細胞事件での理研の対応を非難する

今回のSTAP細胞スキャンダルについて、 理研は沈黙を守っているようだが、 この対応は全く以って非難に値するものだ。 問題は沢山あるが直ちに謝罪すべき問題は、 最初のプレスリリースの時点での誇大広告である。 記者会見と比べればプレスリリースの方はま…

STAP細胞は応用の話し抜きに世紀の大発見

今朝の読売の朝刊のトップは、 理研の小保方晴子ユニットリーダーによるSTAP細胞の話。 これは本当に凄い発見だと思う。 何しろこれまでの生物学の常識を覆して、 哺乳類の分化した細胞を遺伝子導入なしに、 外部からの刺激でリプログラミングしたというのだ…

最初から「信頼の構造」はあったのだろうか?

影浦峡『信頼の条件-原発事故をめぐることば』を読んだ。 福島の原発事故後の科学者などの不適切な発言を巡って書かれたもの。 探求者としての「科学者」と権威主義的「専門家」の区別とか それなりに興味深い視点はあるものの 自分には「きれいごと」過ぎ…

インターネットで科学の話題が増えない一つの理由

ぱんつさんという人の 「インターネットからニセ科学を減らすたった一つの簡単な方法」 http://fm7.hatenablog.com/entry/2013/06/07/140130 という記事が話題になっているようだ。 インターネットに限らずいい加減な情報が多く出回っているのは確かだが、 …

トビイカ On TV

トビイカの動画でもないかとネットを漁っていたら 映像は未見だが面白いものを見つけた。 2002年8月8日にNHK総合で放送された 「空飛ぶイカ、海面を走る貝 ~ある航空力学者の果てしなき探求~」 という番組でトビイカが紹介されていたようだ。 NHKの番組広…

トビイカとか知名度低いのかな?

今朝の朝刊各紙にイカの飛行生態を解明したという 北大のプレスリリースが紹介されていて、 ネットでも評判になっているみたいだ。 http://www.hokudai.ac.jp/news/130207_pr_fish.pdf 修士の学生さんが主になって論文までまとめたのは立派とは思うが、 なん…

Ignorance is no excuse!

産経新聞の記者が書いた 「科学取材…専門用語飛び交い理解不能の世界、頭が真っ白に」 http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/121030/wlf12103009110001-n1.htm http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/121030/wlf12103009110001-n2.htm http…

だって御用学者は嘘吐きじゃん

週プレニュースというサイトで出ている 阪大サイバーメディアセンターの菊池誠教授の 「科学から見た反原発の問題点」 http://wpb.shueisha.co.jp/2012/07/03/12292/ というインタビュー記事が話題になっているようだ。 インタビュー記事というのは編集の手…

Diary of a Madman

専門家は専門外のことは素人だと思えというのは、素人は黙っているべきだということではなくて、専門家の専門外のことでの発言は素人の発言と思えということに過ぎない。ごく普通の素人がスポーツや芸術のことにあれこれ好きなことをいうように何かの専門家…

超光速ニュートリノの話題に寄せて-基本理論と近似

ミューニュートリノで超光速が観測されたとされるOPERA実験の話題は、読売新聞のような一般紙でも第一面を飾り、世間でも広く関心を持たれていることがよく判る。 2007年にも米フェルミ研のMINOS実験でも精度は劣るものの似たような報告があったそうなので、…

安易に断言しないのが科学的態度

sivadさんが「低線量被曝による鼻血について考える」 http://d.hatena.ne.jp/sivad/20110906/p1 という興味深い記事を書いておられる。 低線量の放射線による鼻血というよりも 放射性降下物の粘膜への付着による鼻血の可能性については、 安易に否定すべきで…

専門家の間で意見の対立があるから?

原発事故で専門家が信用を失ったことについてちょっと検索していたら 山口浩という人の「『専門家』の責務としての科学コミュニケーション」 http://synodos.livedoor.biz/archives/1798062.html という記事を見つけた。 そこでの 「その観点で注目したいの…

嘘つき専門家が信用されるわけない

原発事故で原子力に関する学者達が信頼を失ったのは、 意図的な嘘をついたからであって、 それ以外のことは瑣末な枝葉に過ぎないと思う。 全電源喪失から数時間でメルトダウンどころかメルトスルーが起こるということは 原子力安全基盤機構のシミュレーショ…

原子力の専門家集団は自浄能力を示せるか?

児玉龍彦・東大アイソトープ総合センター長の 衆議院厚生労働委員会での参考人陳述が話題を呼んでいるが、 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8f7f0d5f9d925ebfe7c57aa544efd862 その中で名指しはされていないが 「プルトニウムを飲んでも大丈夫という…

国策としての科学コミュニケーションは失敗なのだと思う

ちょっと「国策」と「科学コミュニケーション」で検索すると 「サイエンスコミュニケーション国際シンポジウム「科学を語り合う」」 http://www.life-bio.or.jp/topics/topics212.html というのが引っ掛かってきた。 どうやら科学技術政策研究所がブリティッ…

コンサルティングでは技術士はプロ、博士は?

理工系の博士を市民が個別の問題について相談するための、 医師や弁護士に相当する科学コミュニケーションの専門家とみなすことに 賛成できないのは先日書いたが、 医師や弁護士に相当するのは博士ではなく技術士だろう - 地獄のハイウェイ そこで書き漏らし…

医師や弁護士に相当するのは博士ではなく技術士だろう

医師や弁護士が担っているような、 個別の問題について市民が相談する専門家という パーソナルな科学コミュニケーションの担い手について、 榎木英介さんが書いておられる。 http://d.hatena.ne.jp/scicom/20110725/p1 「医療や法律だけでなく、科学技術に関…

科学者のパトロン・クライアント関係について考える

先日、政府と科学者の関係をパトロン・クライアント関係であると書いたが、 ネットで検索したら同じようにパトロン・クライアント関係として政府と科学者の関係を見ているものがあった。それは田中一郎という研究者の「ガリレオと処世術としての自然研究 : …

科学者/一般市民という二項モデルから産官学民4項モデルへ

科学コミュニケーションにおいて原発推進プロパガンダについて どう考えているか、どう考えるべきなのかという昨晩書いたことの続き。 科学コミュニケーション業界には、 科学コミュニケーションはプロパガンダとは違うというような見解もあるようだが、 (…

プロパガンダと科学コミュニケーション

ふと原子力村というか原発推進派の方の情報発信(プロパガンダ?)は 科学コミュニケーションの範囲に入るのだろうか?と思った。 例えば、 「原子力百科事典ATOMICA」 http://www.rist.or.jp/atomica/ とかは結構参考になるし、 またプロパガンダ色がかなり…