TVや新聞といったマスメディアに登場する科学者について
信用できるかどうかを見分けるという議論の立て方は、
そういうことを聞きたくなる気持ちは分かるものの、
よく考えてみればその根底にある思考パターンは
ある主張なり情報なりについての信頼性を
その発信者の信頼性に置き換えたり強く関連付けたりするものだ。
こういう思考パターンは実のところ
権威からの議論とかその逆の対人論証(アド・ホミネムな議論)といって
クリティカル・シンキングにおいては否定的に扱われるものだ。
更に言えばある分野できちんとした研究業績を持った科学者が専門外の分野で
頭が痛くなるような妄言を垂れ流すことは別に珍しいことではないし、
(オカルトバスター大槻義彦の月の石捏造説など比較的有名ではないだろうか)
大学や国研の出すプレス・リリースが大風呂敷を広げていることも日常的な風景だ。
(医療や創薬への貢献が期待云々のプレス・リリースのかなりの部分がそうだ)
だから、マスメディアで科学的な話題に接したときには
どんな人物が言っているのかについて気にするなとは言わないが、
その話題についてさらに詳しく調べてみようとするくらいの興味がないのであれば、
とりあえず「そんな説もあるみたいだ」程度に、
話半分に聞いておくのが無難だと思う。
先端的な研究や学説であれば評価が固まるにはまだ相当の時間が掛かるわけだし、
現在の定説だって研究の進展次第で引っくり返ることもあるのだから。