地獄のハイウェイ

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幹細胞研究者って科学的な真理の探究者なの?

 小保方の手記の出版以来このところSTAP騒動が再燃しているようだし、更には小保方がSTAP事件以前に出していた論文が取り下げになったとか色々と新たな話題も出てきているようだ。

 前にも少し書いたが自分はバカンティの胞子様細胞(芽胞様細胞)というのは限りなく怪しい代物で信用に値するものではないと見ている。幹細胞研究者達がこの仮説を葬り去るでもなく放置しているのは不健全だと思うが、バカンティのトンデモ仮説と似ているMUSE細胞については幹細胞研究者達が一般の人にも容易にわかるような形で肯定あるいは否定について言及をしているのを見つけることができなかった。

 MUSE細胞というのは東北大の出澤真理が発見したとされるストレス耐性のある間葉系組織由来の多能性幹細胞と言われているものだ。
https://www.terumozaidan.or.jp/labo/interview/09/03.html
http://www.jsao.org/image/custom/pdf/42_1PDF/42_16.pdf
 こちらの研究グループは現在も盛んに活動しいているようで昨年10月にも東北大学からプレスリリースが出たりと中々派手に宣伝されている。
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2015/10/press20151005-02.html
 ところがこのMUSE細胞なるものは出澤のグループ以外に再現に成功している研究者はほとんどないようなのである。

 一方で例の小保方の学位論文の骨髄由来のsphere細胞なるものは、このMUSE細胞にきわめて類似している。素人目には小保方の学位論文のsphere細胞というのはMUSE細胞とほとんど同種のものではないかと見えてしまう。実際、STAP事件でもMUSE細胞のことは強く意識されていてSTAP細胞MUSE細胞でないことを示すべき実験が行われていた。
 ところが、最初期に論文不正の指摘のあったゲルの切り貼りは、こともあろうかSTAPがMUSEでないことを示す実験で行われていた(これについては以前に書いた )。STAP細胞MUSE細胞でないことを示すこの実験やその他諸々については、疑惑が発覚して比較的早い時期に取り下げられてしまったので、その後しばらくは「STAP=MUSE説」のようなものも出てたりしていた。
 しかしながらその後のSTAPが実はES細胞の流用だったりとかの展開で、このMUSE細胞との関連のことはほとんど忘れられているようだ。

 STAPの方はインチキだったようだが、ではMUSE細胞というのはまともなのだろうか?海外ではどうなのかは知らないが少なくとも、日本の幹細胞研究分野の研究者たちはMUSE細胞問題について公衆の前では沈黙しているようだ。
 科学者は真理の探究者だ云々と声高に叫んでいる人達は、幹細胞研究分野で相互批判による仮説の振るい落としが機能していないことに、何の異常も感じないのだろうか?