地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

国民を馬鹿にするな

昨日、野田総理大臣が関電大飯原発について、
早期の再稼働が必要だと判断したと表明したそうだ。
http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/2012/0608.html
曰く
「福島を襲ったような地震津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています。」
一体どういう根拠でこういうことを言ってるのか?
政府の発表した「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」か?
http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/pdf/120406-11.pdf
これって具体性のないもので、
例えば全電源喪失に何時間耐えられるようにすべきなのか全く不明。
狭隘部のある半島の先端にある大飯原発の場合、
地震津波に襲われたら道路などが寸断されて、
原発へのアクセスが途絶しそうに思われるが
関電の発表している安全対策を見てもその点には触れていない。
http://www.kepco.co.jp/pressre/2012/pdf/0409_1j_01.pdf

因みに調べてみると、
原子力安全委員会原子力安全基準・指針専門部会、安全設計審査指針等検討小委員会
というところで全交流動力電源喪失に関する検討が行われている。
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/anzen_sekkei/anzen_sekkei11/siryo1.pdf
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/anzen_sekkei/anzen_sekkei11/siryo2.pdf
これまでの安全審査では全電源喪失は慣例的に30分間であって
長時間の全電源喪失を考慮していなかった点を改めようと指針の改定が検討されている。
残念ながらこのような全電源喪失に関する安全審査指針の改定は
原子力規制庁の発足が遅れていることもあってストップしたままのようだが、
せめてこの新しい指針で専門家の審査をさせて判断すべきではないだろうか。

原発の運転再開については色々な意見があり得るけれど、
賛成にせよ反対にせよリスクを抱えていることを認識しなければならない。
危険があっても経済優先で運転再開という判断もあっても良いと思うのだが、
医療のインフォームド・コンセントではないが、
選択肢に関わる便益のみならずコストやリスクに対して正確な説明が
国民に対してあるべきだろう。
「リスクは承知の上で国民生活や経済の混乱を避けるために」とか言えばともかく
それをリスクがないかのように装って「安全です」というのは詐欺に等しい。
国民を馬鹿にするのもいい加減にしろと言いたくなる。