地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

プロパガンダと科学コミュニケーション

ふと原子力村というか原発推進派の方の情報発信(プロパガンダ?)は
科学コミュニケーションの範囲に入るのだろうか?と思った。

例えば、
原子力百科事典ATOMICA」 http://www.rist.or.jp/atomica/ とかは結構参考になるし、
またプロパガンダ色がかなり強いけれど
「あとみん」 http://www.atomin.go.jp/index.html は、
結構良く出来ているような気もする。
こういったサイトに関して、
科学コミュニケーション関係者の評価はどうなのだろう。

ところで共産党の「赤旗」によると
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-07-16/2011071603_02_1.html
原子力広報・教育予算は毎年60億円規模だそうだ。
これはそんなに怪しい数字ではなく
原子力委員会の資料でも平成20年度約58億円、平成21年度約44億円となっている。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/simin/sankon/siryo/sankon34/siryo1-1.pdf
地方自治体や電力会社などが支出する同種の費用(東電だけでも100億を超えるとか)を含めると
年間1,000億円近いとか2,000億円近いという推定もされている。

一方、文部科学省の科学コミュニケーション関連の予算額
平成22年度で見ると
科学コミュニケーション連携推進事業が6.5億円
日本科学未来館事業が22億円弱といったところ。
教育が中心のものを入れれば
スーパーサイエンスハイスクールが20億円なので
そういうのを加えると総額50億円程度といったところであろうか。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2011/01/11/1301074_06.pdf
地方自治体とか民間団体が投入している金額はちょっと分からないが、
原子力における電力会社のような有力スポンサーはないから、
その規模はたかが知れているのではないだろうか。

いずれにせよ、原子力という一分野の広報・教育の予算は、
文科省の科学コミュニケーション予算全体と同レベルだし、
民間団体や企業の投入する資金なら、
勝負にならないくらい多いのは間違いないだろう。

原発推進側のプロパガンダ色に染まった情報発信は、
科学コミュニケーションという文脈では、
その分野の専門家からは一体どのように評価されるのだろうか?
原子力は科学ではなくてエネルギー政策だから別物とか、
そういう意見もあるかもしれない。
だが、原発事故をうけた情報発信の中で
サイエンスコミュニケーターが活躍できなかったと嘆いてみたり
ボランティアの科学者達に過剰な負担を期待してはいけないから
コミュニケーターの育成・維持のためのリソースが必要だとか
そういったことを議論するのなら、
政治的に中立であることが困難な事案における
プロパガンダと科学コミュニケーションの関係について、
真剣に検討することから逃げてはならないのではないどろうか。