地獄のハイウェイ

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オウム問題であまり見掛けないことの疑問

オウム真理教の問題は宗教学者とか社会学者とか
そういった人達があれこれ語っていたりするのだが、
そういった言説の中であまり触れられていないことで
ちょっと気になることがあるで書いてみる。

人民寺院とかブランチ・ダヴィディアンとか
あるいはマンソン・ファミリーといった
現代のカルト団体はオウムと比較するのに適切だろうとは思うが、
そういったものとの比較であると
どうしても現代社会における宗教の機能とか
そういった視点に引きずられてしまいがちだ。

ところで
三国志とかで中国の歴史を齧った人なら良く知っていることなのだが
後漢の崩壊は「黄巾の乱」を一つの契機としているが
これは太平道道教系)という当時の新興宗教による反乱である。
その後も水滸伝にも登場する宋代の「方臘の乱」(マニ教系?)とか
元末に発生し明の誕生に関与した白蓮教の「紅巾の乱」とか
清末の「太平天国の乱」とかそういった宗教絡みの反乱は数多くある。
もちろん時代や社会背景は大いに異なるし、
オウム真理教とは規模も大いに異なる。
ただ宗教団体による武装蜂起というパターンは
古代から中世には珍しくなかったのだから
そのあたりも射程に入れて論じても良かろうと思うのだが
(因みに白蓮教は弥勒信仰と結びついている仏教系である)
何故だかオウム関連で論じられることはほとんどないようである。

日本でも中世には一向一揆とか法華一揆とかがあったのだが
オウムと比較されるのは近代の大本教ぐらいのようで
そういった中世の宗教反乱とは比較されることはほとんどない。

こういったアジア圏の宗教反乱の研究は
国史とか日本史といった歴史研究の対象であって
元々欧米の宗教を研究対象としている宗教社会学などの対象でないといった
学問の縄張り問題みたいなのもあるのだろうけれど、
宗教の名の下に既存の政治権力にとって代わろうとするという事象としては
オウム事件と共通性があるのだから比較してみると
オウムに特異的に思えていること(政府機構の真似とか)が
案外ありきたりのことであったりするのじゃないかとも思う。