地獄のハイウェイ

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新型コロナウイルスとマスクの効果について

 世界的な流行(パンデミック)を引き起こしている新型コロナウイルスであるが、素人の印象としては医療関係者の感染が割合と多いような気がする。医療関係者が原発作業員を思い出させるような防護服を着用しているような状況でも感染するケースもあってちょっと恐ろしい。そういう危険な状況には素人には対処できることはないだろうが、市中感染の拡がりに一般市民もできる防護策としてのマスクの効果について改めて考えてみた。

 新型コロナウイルスついては、今までのところ空気感染(飛沫核感染)は確認されておらず感染経路としては無視しても問題ないレベルで、飛沫感染接触感染が主たる感染経路と考えるのが良いようである(それ以外に経口感染については報告もあるようだ)。そうであるとするとマスクの効果を考える上で、飛沫感染について考えれば良いということになる。一部に「コロナウイルスは直径0.1μmだからマスクでは防げない」といった言説が見られるが、空気感染を考えなくて良いのなら明らかにナンセンスな言説である。

 飛沫感染対策としてのマスクの効果を議論することにして、マスクのフィルターとしての性能を考える。 日本衛生材料工業連合会・全国マスク工業会の「不織布マスクの性能と使用時の注意」という資料を見ると、飛沫の径は3~5μmということのようである。また「風邪、ウイルス対策用」というカテゴリーの製品は、Bacterial Filtration Efficiency(BFE)並びにVirus Filtration Efficiency(VFE)が99%ということである。BFEは3μm、VFEは1.7μmの試験粒子を使った捕集率だそうだ。捕集率99%ということだと、透過率として考えれば1%ということになる。従ってカタログ性能通りとするなら感染者(不顕性感染者も含む)が咳やくしゃみで放出する飛沫の99%がカットされ残りの1%しか放出されないことになる。またマスクによって防護する側(感染させられる側、被感染者)も、感染者が放出する飛沫の更に1%しか吸入しないということになり、トータルで感染者の放出した飛沫の1万分の1しか吸入しないことになる。しかしながらこれはちょっと理想的に過ぎるように思われるので、捕集率を低めに80%(透過率20%)くらいに見積もると、感染者が咳やくしゃみをした際に、放出側と防護側の両方がマスクをしていれば、伝達される飛沫の量は双方ともがマスクをしていない場合と比べて25分の1になる。

 一方、単純なモデルでざっくり考えれば感染者から被感染者へ飛来する飛沫量は、両者の間の距離の2乗に反比例すると想定できるので、距離を5倍にすると飛来する飛沫量を25分の1にすることができる。従って、感染者と被感染者の双方がマスクをすれば距離を5倍にするのと同程度の効果はあると考えても良いだろう。

 粗っぽい近似であるが、感染者と被感染者が距離が0.5mであるときに両者がマスクをしていれば実効的な距離が0.5×5=2.5m相当となる効果が期待できる。このこと考慮するなら、新型コロナウイルス対策で言われている「3つの密を避けるの、マスク着用の励行は、密集と密接を軽減する効果があると言えるのではないだろうか。