地獄のハイウェイ

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「ただちに危険ではありません」でないことを願う

エボラ出血熱の流行がやばい状況になってきて
国内マスメディアの報道も増えてきている。
それでちょっと気になるのは感染経路に関する情報。

厚生労働省の一般向けのQ&Aでは
エボラウイルスに感染し、症状が出ている患者の体液等(血液、分泌物、吐物・排泄物)や患者の体液等に汚染された物質(注射針など)に十分な防護なしに触れた際、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染します。一般的に、症状のない患者からは感染しません。空気感染もしません。」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ebola_qa.html
あるいは厚生労働省検疫所の医療関係者向けの情報でも
「その後、エボラは感染した人の血液、分泌液、臓器、体液など、また、これらの体液に汚染された物の表面や日用品(ベッド、衣類など)と直接接触することによって人から人へと感染が広がります。」
http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/10091357.html
というように書かれていてあたかも「接触感染」のみのような書かれ方である。
しかし患者の唾や痰がウィルスを含んでいることもありそうだから
普通に考えれば飛沫感染はありえるのではないか。
検疫所の方では顔面の防御を「1m以内でエボラウイルス感染者と接するときに」
としているが1mというのは飛沫の届く範囲という意味合いだ。
医療従事者が医療用マスクやゴーグルなどで顔面の防御をするのも
飛沫感染の危険を避けるためだというのが自然な理解だ。
それに厚労省は一般向けQ&Aで
エボラ出血熱は、咳やくしゃみを介してヒトからヒトに感染するインフルエンザ等の疾患とは異なり、簡単にヒトからヒトに伝播する病気ではありません。病気に関する知識を持ち、しっかりした対策を行うことで感染を防ぐことができます。」
というようにインフルエンザと比べているが
インフルエンザも厳密には空気感染ではなく主として飛沫感染ではないか。

また調べてみるとエボラウイルスの中で人への毒性は非常に低いものの
空気感染が濃厚に疑われているレストン株というのがある。
http://idsc.nih.go.jp/iasr/32/377/dj3773.html
現在西アフリカで流行しているエボラ出血熱が空気感染するという証拠はないが、
ごく近縁ウィルスは空気感染するのだから
空気感染を完全に否定する証拠はないようだし
少なくとも飛沫感染はするのものだとして対処するのが
予防原則の観点から望ましいように思う。
そう考えると厚労省の一般向けQ&Aは、
福島原発事故の際の枝野官房長官(当時)の「ただちに危険ではありません」のような
パニックを恐れる余りの過度の安全強調を思い起こさせてちょっと嫌だ。