地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

学校教育で強化すべきなのは理科なのか

日本学術会議
「これからの教師の科学的教養と教員養成の在り方について」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-y1.pdf
という要望をまとめたようだ。
いわく小中学校の教師の科学的教養が低下して
日本の若者の科学的能力の低下の原因になっているので
理系の大学院出が小中学校の教員に成りやすいようにして欲しい云々。
教員の質の低下に関する定量的データは教員採用競争率くらいで、
あとは他の先進国と比べて修士以上の学歴が少ないとかそういう話。
それはそうなのかもしれないがそれは他国に引き離されかけている話と
過去と比べて教師の科学的教養が低下した話を混同しなければ
本当に教師の科学的教養が低下したのは本当なのかは報告書からは判断できない。
それに、
「その結果、わずか2単位の教科専門科目(数学、理科等)を大学で履修するだけで免許状を取得し、小学校教師になる者も珍しくはない(資料16)。」
(提言本文4ページ、全体で9ページ目)
とか書いている割には
その肝心の資料16は「教員の出身学部構成」という資料でしかなく
わずか2単位の教科専門科目しか履修していないで小学校教師になるものが
いったいどの程度いるのか不明だったりと
資料の使い方にかなり怪しいところもある。

他にも資料の取り扱いには怪しいところはあって
例えば資料1の
文部科学省教育課程実施状況調査同一問題通過率比較にみる変化」では
同一問題通過率を1994年と2001年、2001年と2003年で比較しているが
1994年よりも2001年の方が少々下がっているようだが(項目の単純平均で-1.86%)
2003年は2001年よりも少々上がっているように見える(項目の単純平均で+1.75%)。
生徒の科学的能力の低下を示す資料としては役に立たないではないか。
こういう資料の使い方をしているような人達の科学的リテラシー
本当に大丈夫なのかと心配になってくる。
こういったデータは自然科学というよりは教育学か社会学の範疇に入るだろうから
ひょっとすると提言をまとめた人たちには
社会科学的教養が不足気味なのかもしれない。

もちろん
大学院で専門的知識を学んだ人を理科教育に使おうとか
現場の教師にリカレント教育の機会を与えようとか
(提言中ではリカレント教育という語は使われていないようだ)
そういう話には反対する気はないし、
むしろ是非そうして欲しいとは思う。
ただ提言の中の問題の多い部分を見ていると
科学的リテラシーの涵養を謳う人達には申し訳ないが
むしろ国民の社会科学的リテラシーを向上させる方が急務なように思えて仕方がない。