誤解されないように最初に宣言しておくが
自分は科学が価値中立的だとは全く思っていない。
近代社会の中で「善」とされるもであるからこそ、
それを推進しようとする社会的努力が行われていると信じている。
従って近代社会の価値規範を是としない立場（例えばアーミッシュ）からは、
科学は「善」に反するもの、すなわち「悪」と見なされ得ると考えている。
もちろん自分と違って科学そのものは「善」ではなく
その応用において初めて
「善」にも「悪」にもなり得るものと考える人もいるだろう。
それならば応用において「悪」になり得るものを推進するには、
極めて用心深く監視し制限する必要があるのではないかと思うのだが、
科学の価値中立性を奉じる立場の人から、
そのような制限に賛成する意見を聞くことは極めて稀である。
おそらくそのような価値中立論者達の本当の考えは
＜科学は本来的に「潜在的な善」であり、誤用されることで「悪」になる＞
と表現すべきものなのではなかろうか。
もしも科学が善でも悪でもないものであったら、
科学よりも「善」であることが明らかな物事に対して
国家や社会が優先的に資金を投入するべきではないかと思う。
ところが科学者というか研究者の一部には
障害者であるとか社会的に困窮している人達への福祉予算よりも
「科学技術立国」のための科学技術予算を優先しろ主張する人も少なくない。
科学が本当に社会的な善悪から中立的なら、
社会的弱者への援助のような社会で善とみなされるものよりも
科学が優先順位が上だとは主張することは筋の良くない主張だ。
科学者のプライドを傷つけることになるかも知れないが、
科学の価値中立性を本気で信じているのなら、
研究者に支払う賃金はそのような行き方しか出来ない人達への
生活保護と見なされても仕方あるまい。
