地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

科学/技術

リー・マッキンタイア『「科学的に正しい」とは何か』

リー・マッキンタイア『「科学的に正しい」とは何か』(ニュートン新書)を読んだ。 www.newtonpress.co.jp 原題は”The Scientific Attitude”。常温核融合のような病的科学のケースや逸脱としての研究不正や地球温暖化否定論のような否定主義、疑似科学など…

”空飛ぶクルマ”の方がオスプレイよりも危ないんじゃないの?

昨日、米軍のCV-22オスプレイ屋久島沖で墜落する事故があって、NHKとかのニュースでは大きく取り上げている。オスプレイも初期は事故が割と多かったので、危険性云々が色々といわれるが、初飛行(1989年)から34年、運用開始(2007年)からでも16年も経過し…

『サイエンス・ファクト  科学的根拠が信頼できない訳』

ガレス・レン&ロードリ・レン『サイエンス・ファクト 科学的根拠が信頼できない訳』(ニュートン新書)を読んだ。 www.newtonpress.co.jp 原題は”The Matter of Facts: Skepticism, Persuasion, and Evidence in Science”。著者は、ガレス(父親)が神経内…

結晶学者は太陽電池の夢を見るか?

結晶学という学問のジャンルがある*1。主としてX線や電子線の回折を利用して結晶性物質の構造について実験的に研究する分野で、固体物理や物質科学からタンパク質といった生体分子の構造決定まで広い分野で基礎的な役割を果たしているため関連する研究者も多…

医学者に科学では社会のことは排除するとか力説されるとねぇ

ある医学系の研究者が 「科学から社会や政治の影響は可能な限り排除すべき」とかの趣旨を 力説しているのを見て正直がっかりした。 医学とかそういうのって 単に真理を追究するのではなく 社会的な意味での善を求めてもらわないと困る。 別の医学系研究者も …

科学の進歩へ寄せる信頼は科学者の間なら普通だろうけれど

一昨日、感想を書いた『世界を騙しつづける科学者たち』を読んで思ったのだが、 この本で槍玉に挙げられているような科学を捻じ曲げる一部の科学者が 環境保護主義的な規制に反対する心情の根っこには市場原理主義もあるが同時に、 「環境問題はテクノロジー…

論争しない科学者って

STAP事件絡みのネットの記事を見ていてふと思ったのだが、 同業者が研究不正を追及しないことに関して 「科学者は他人の研究報告を批判しても業績にならないのでしない」式の言説を 見掛けることが割とある。 しかしこれは素直に受け取って良いのだろうか? …

科学者の得手不得手

ふと思ったのだが、 科学者と言われる人々が優れている点は、 専門的な知識を別にすれば、 どのような点だろうか? もちろん科学者といっても、 物理系とバイオ系では数学的能力などで大きな差がある。 はっきり言っていわゆるバイオ系だと一部の例外を除け…

科学者・技術者は軍人のようなもの

ネットでうろうろしていたら次のような文章を見つけた 「パラダイム論的に見れば、科学者・技術者というのは軍人のようなものである。そのことを公共政策決定関係者が十分認識しなければならない。」 http://www.geocities.jp/nomonomoglobalwarming/Reviews…

「なんの役に立つんですか?」にびびってどうする?

「最果タヒ ノ 森山森子」というブログの “「なんの役に立つんですか?」の暴力性”http://d.hatena.ne.jp/m0612/20100414/p1 という記事が話題を集めているようだ。 その主張の素朴さにはちょっと微笑ましくも感じるのだが、 一方で幾つかの違和感を覚えるの…

明るい未来って「地上の楽園」みたいなものだろう

堀川大樹さんという方の「日本のアカデミアの将来はきっと明るい」 http://d.hatena.ne.jp/horikawad/20120106/1325857642 という記事を読んだ。 競争激化で若手専任研究者のレベルが上がっている上に 博士課程への進学率が下がって研究者適性のない進学者が…

専門家だけど有識者じゃない

少し前の2005年の話になるが、 産業技術総合研究所理事長(当時)の吉川弘之が 皇室典範に関する有識者会議の座長を務めた際に、 「皇室の歴史も知らぬロボット工学者が有識者なのか?」と 多くの非難を浴びたのは覚えておいでの方も多いだろう。 もう何回も…

技術士と博士を関連付けよう

昨夜の記事(医師や弁護士に相当するのは博士ではなく技術士だろう - 地獄のハイウェイ)の続きで、 技術士と理学・工学分野の博士の間の関連付けについて考える。 医師や弁護士のような無資格者の業務を排除するような 独占的な地位が技術士には与えられて…

科学が本当に価値中立なら科学者への給料は生活保護みたいなもんだ

誤解されないように最初に宣言しておくが 自分は科学が価値中立的だとは全く思っていない。 近代社会の中で「善」とされるもであるからこそ、 それを推進しようとする社会的努力が行われていると信じている。 従って近代社会の価値規範を是としない立場(例…

科学技術者の潜在的政治力

先日もTPP(Trans-Pacific Partnership)について触れたが、 菅内閣は基本方針を今日の閣議で決定したそうだ。 菅首相は「平成の開国」と強調しているそうだが、 早速、農業関係者からは反対の声が上がっているようだ。 それでふと日本の農業人口ってどの位…

「はやぶさ」帰還

今朝の読売新聞の一面トップは、 「はやぶさ」の大気圏突入の流れ星のカラー写真だった。 ネットのニュースサイトのアクセスランキングでも 「はやぶさ」帰還とかカプセル回収とかの話題が上位になったようだ。 危機を乗り越えての帰還というドラマに 人々の…

技術者魂

NHKの今日の「クローズアップ現代」は 「傷だらけの帰還 探査機はやぶさの大航海」というもので 「はやぶさ」がいかにトラブルを乗り越えてきたかを紹介するものだった。 内容的にも大変興味深かったが ナレーションでプロジェクトリームの人達のことを 「科…

日本は科学技術で生き残れるのだろうか?

科学技術振興機構(JST)のJournal@rchive(ジャーナルアーカイブ)事業は 古い学協会誌のバックナンバーをネットで見る事ができて非常に有難い。 学生だった頃に影響を受けたものなどを見る事ができて本当に重宝するのだが、 当時強い印象を受けたものの一つに…

頭脳流出の何が悪いの?

科学研究と産業界との結びつきが弱くて、 学位取得者の就職がままならないような分野なら、 国内の産業界が求めているわけでもないのだから それらの人が海外に行ったからと言って どれだけの経済的損失になると言うのだろう? 例えば南部陽一郎さんがアメリ…

求められているのは学知ではなく賢慮

sivadさんが「たぶん科学リテラシー以前に生活リテラシーが必要なんだと思う」 http://d.hatena.ne.jp/sivad/20090928/ というエントリーを書かれている。 書かれている内容にはほぼ同意できるので、 ぴったりの言葉を思い出したので紹介しておきたい。 それ…

科学は道徳に干渉してはいけないのか

疑似科学批判関係でmzsmsさんという方が 「科学は道徳に干渉しようとするべきではない」という考えに固執すべきでない という考察を述べておられる。 http://d.hatena.ne.jp/mzsms/20090418/1240045713 自分なりに科学と価値の関係を考えてみた。 科学的発見…

国産固体燃料ロケットについて

北朝鮮の弾道ミサイル(衛星打ち上げロケット?)の発射で マスメディアは大騒ぎだが、 人工衛星の打ち上げについてちょっと調べてみると結構興味深い。 英語版のWikipediaの記述を参考に見ると http://en.wikipedia.org/wiki/Timeline_of_first_orbital_lau…

Cell Nante Shiranai

物性系の研究者としゃべっていた時にマンガの話題になり、 荒木飛呂彦がCellの表紙を飾った話をしたら 「Cellって何?」と聞かれた。 インパクト・ファクターの大きい細胞生物学系の雑誌だと言うと 「ごめん、知らないわ」と言われてしまった。 生命科学系だ…

何のための科学リテラシーか

ニセ科学批判とか疑似科学批判とかそういう話では、 「科学ではないのに科学であるように見せかけているニセモノ」を見破るために、 市民に科学リテラシーというものが必要だとされている。 科学コミュニケーションとかサイエンス・カフェとかそういう業界で…

市民の科学へのアクセスのために

サイエンス・コミュニケーションでは 専門家集団と一般市民の間の相互交流を目指していると思うが、 市民側から科学的知識にアクセスしようと考えるなら いつ開催されるか分からないサイエンス・カフェを待つだけでなく 自分からアクションを起こせる自由が…

科学の中の技術

今年のノーベル化学賞はGFP(緑色蛍光タンパク質)関連だったが、 受賞者に日本国籍を持つGFPの発見者である下村脩(以下、敬称略)が 含まれていたこともあって世間的な注目が集まったようだ。 GFPはタンパク質だけで蛍光を発し補酵素等を必要としないため…

国威発揚でも産業貢献でもなく

大「脳」洋航海記のvikingさんが、 自分の「役に立たなくても面白いものを」に対して "「国民の科学」を目指しても問題は解決しない" http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=2021 というトラックバックを送ってくださった。 訪れる人もまばらな過疎地ブ…

役に立たなくても面白いものを

基礎科学に優秀な人材が集まらないと、 日本の産業の未来がないとか国際競争力が保てないとか、そういう議論がある。 この議論には暗黙裡に、基礎研究→応用研究→開発研究という イノベーション論で言うところのリニア・モデルが前提とされている。 リニア・…

活動としての科学か体系としての科学か

ムペンバ効果という、温度が高い水の方が より低温の水よりも短時間で凍るという現象をめぐって ネットでいろいろと議論があったようだ。 自分自身は話題になるまでこの現象を知らなかったけれど 一部では良く知られていた現象のようだ。 http://en.wikipedi…

科学の間のコミュニケーション

科学コミュニケーションは流行っているとまで言わないが、 それなりに認知もされ普及しつつあるように思う。 多くの場合、そこで考えられているのは 科学者と一般市民との間のコミュニケーションと言って間違いないと思う。 それでちょっと思ったのが、 バイ…