地獄のハイウェイ

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優先順位問題、御用学問とニセ科学

ちょっと大きめの本屋に行ったら原発事故関連本のコーナーに、
安斎育郎「福島原発事故」という本が
高木仁三郎小出裕章広瀬隆といった人達の本と並んで積んであった。

安斎育郎は、
これまで巷ではもっぱら疑似科学批判の人として知られていたと思うが、
ここに来て反/脱原発派としてもスポットライトを浴びてきたようだ。
安斎は東大在職の折に反原発を主張したため、
監視をつけられるなどの迫害にあったそうなので、
疑似科学批判よりも反原発の主張を取り上げてもらう方が
広瀬隆と同列なのは不本意だろうけれど)
ひょっとしたら本懐なのかもしれない。

疑似科学批判で知名度の高い人物で安斎以外に
原発に批判的なのは池内了くらいで、
一方では大槻義彦のような原発推進派もいる。
疑似科学批判者にはSFファンが多いらしいし、
かつてのSF物では「原子力=夢のエネルギー」という図式があったためなのか、
どちらかと言うと反/脱原発派は少数派のようだ

ルイセンコ事件のように疑似科学が御用学問になったケースもあるが、
多くの疑似科学ニセ科学問題は、
例えば昨夏に学術会議会長声明が出たホメオパシーのように
「科学であるという社会的認知を受けていないのに科学を自称する」ケースが大部分だ。
一方、国策で推進されアカデミックな業績評価システムに組み込まれていて
論文等の科学的な業績と審議会や公的報告書等での曲学阿世振りのセットでの
出世と競争的資金の確保が横行している分野では、
研究の面にだけに注目するとそれなりの専門分野ということなので
疑似科学ニセ科学批判で槍玉に挙げられることは極めて少ない。

ところで疑似科学ニセ科学問題界隈では
「優先順位問題」と呼ばれる話題がある。
科学者として先にやるべきことは別にあるのじゃないかという
そういう疑似科学批判に対するメタな批判があって、
批判すべき優先順位はそれぞれの人の問題意識によるのだから、
社会的重要性のような高次の基準になじまないと応答するような話だ。

では自分の中で御用学問と疑似科学ニセ科学を比較して
いずれが批判すべき優先順位が高いかと言えば、
それは圧倒的に御用学問の方だ。
なぜなら政治権力に結びついていて
国民に与える危険性がずっと高いからだ。
それに御用学問と対峙するには、
政財界のプロパガンダや洗脳的教育に抗わなければならないのだから
誰かがやってくれるのを待っているわけには行かないのだ。