地獄のハイウェイ

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漂流する博士は定着できるのか?

博士のノンアカデミック・キャリアのことを考えていて、
ちょっと気になったことがある。
それは、ノンアカデミック・キャリアを選んだ博士達は、
もしもアカデミアに戻るチャンスを得たら
今働いている職場を辞めることに躊躇するのだろうかという疑問である。

積極的にノンアカデミック・キャリアを選んだとか
能力的にアカデミアの研究者の道を諦めたとか、
そういうケースではなくて、
巡り合わせでポストがなくて転進したような人なら、
躊躇せずにアカデミアへの帰還を選ぶのではないだろうか。

一方、かなり多くの民間企業では
就職後3年以内の自己都合退職には退職金が出ない。
(2007年の調査では約48%、勤続2年以上を退職金の要件とするなら約62%に達する)
これは職場での教育訓練による従業員の能力向上の成果を確保するために、
早期の転職では損するような退職金制度によって
転職を抑制しているためであると考えられている。
(逆に3年内離職率が高いような職場はブラックだとか言われる)
もちろん業種にもよるが1年目の新人が、
ベテラン並みに働けると期待される職場は少ないだろう。
それに職場内外での信頼とか人間関係の構築などには
数年掛かるというのは良くあることだ。
だから雇う側からすれば、
自己都合で2~3年で辞める可能性の高いような人は
正社員としての採用を避けたいということになる。
逆に言えば2~3年で辞めるかもしれない人でも構わないのは、
企業側からの教育訓練を施すつもりのない
契約社員のような場合ということになる。

アカデミアへの帰還を夢見る博士達を責める気は全くない。
しかしアカデミアへの未練を見透かされたら、
正規雇用への道が極めて狭いものになるのは間違いないだろう。