地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

Self-Reference ENGINE

先日芥川賞を受賞したポストポスドク作家である円城塔のデビュー作が
文庫になっていたので買ってみたが、結構面白かった。
「砂の嵐に隠されたハノイの塔」(アニメ「バビル2世」主題歌のもじり)とかの
くすっとするような小ネタがあったりするので、
SF好きの人なら元ネタがわかって面白がる小ネタが満載なのだろう。
自分はSFとかその方面はあまり詳しくないが、
知ってる範囲だとS.レムのナンセンスもの(自分は「泰平ヨン」しか読んでない)とか
筒井康隆のナンセンスものなんかに近い印象を受けた。
"Self-Reference"(自己参照、自己言及)は著者のこだわりのあるテーマで
それに絡めて言語実験的作品を仕掛けたのかなという気がする。
一方で自己言及であれば哲学系で定番の
「うそつきのパラドックス」とか「ラッセルのパラドックス」とかには
関連が希薄そうなので(Curryは少し出てくる)
論理学ではなく違った数理分野の背景があるというのは何となく分る。
ポストモダン哲学系の読者だとまた違った感想を持つだろうし
読者の持っている背景知識で受け止められ方は変わるのだろうが
このあたりは作家でもある分析哲学者の三浦俊彦あたりの感想も聞いてみたい気もする。