地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

研究不正について思ったこと

今回STAP事件では派手な宣伝活動が話題を集めたこともあって
多くの人々を驚かし改めて注目を集めている研究不正だが
研究不正の問題は今に始まったことではない。
この手の話題をまとまって取り上げた初期の著作として知られているものに
W.ブロード&N.ウェード『背信の科学者たち』がある。
この『背信の科学者たち』の中では、
他人の論文をそっくり盗用して多数の論文を作成したアルサブティ事件や
キナーゼ・カスケード説を「実証する」捏造を行なったスペクター事件など
今回のSTAP事件と似たような事件が色々と紹介されていて参考になるのだが、
原書"Betrayers of the Truth"が出版は1983年(邦訳は1988年)である。
その頃からずっと研究不正の問題が注目されてきたのだが
研究不正についての事案は後を絶たない。
そういう事件が起きるたびに、
「教育」がどうしただとか「研究倫理」がどうしたとか、
そういう議論が何回も繰り返されてきたのだが、
ずるをしてでも成功を勝ち取りたいと思う人間は
いつの世でもある程度の比率で存在するようで研究不正事件は繰り返される。
結局のところ研究不正を防ぐことは「教育」や「倫理」だけでは難しい。
もう少し違った観点から見る必要があるのではないだろうか。
研究不正を見る観点には社会学であるとか心理学であるとか色々あると思うが
自分がちょっと思ったのは、
研究不正を生物の「擬態」のようなものだと見なせないだろうかということ。
つまり毒を持たない生物が毒を持った生物を擬態して利益を得るように、
まともな研究ができたように擬態して利益を得ようとしていると見なすわけだ。
唯の思いつきに過ぎないが、
もしかすると擬態の進化の条件についての研究であるとか
あるいは進化ゲーム理論であるとかから得られる知見を参考にすることで
研究不正を少なくするヒントが見つかるのかもしれない。