地獄のハイウェイ

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「口を出さずに金だけくれ」は通用しない

今回のSTAP事件に関連して
官房長官理研に対して文部科学省を通じて説明を要求したり、
下村文部科学大臣が論文の撤回を期待した発言したことに対して
「研究現場への政治介入の危機」とみなす意見がある。
(例えば http://d.hatena.ne.jp/scicom/20140312/p1 )
しかし理研は唯の研究機関ではなく「独立行政法人」であり
収入の大半は運営交付金や各種の政府補助金なのだから
その運営に関して監督官庁があれこれ言うの当然ではないだろうか。

政治の恣意的な過剰介入が望ましくないことは自分も同意するが
例えばどこかの独立行政法人核兵器の開発を研究テーマにしたら
「科学コミュニティの独立」なんてお題目を唱えている訳には行かない。
少なくとも独法であれば応用研究に関しては研究内容について
政府の干渉を受けるのは当然のことではないだろうか。
更に今回のSTAPスキャンダルについて言えば、
安倍内閣が掲げる成長戦略の中核である再生医療分野の研究として行なわれているのだから、
理研に政府に対する説明責任があるのは当然ではないだろうか。

今回の事件では関連の薄い学会(例えば日本化学会とか)はコメントが憚られるし、
一方で関連が深い分野の学会に関して言えば
日本発生生物学会はその事務局が
渦中の理研の発生・再生科学総合研究センターにあったり、
また日本再生医療学会は理事長の岡野光男が
小保方晴子のSTAPとは別件の研究不正の疑いがある論文の共著者であったりの事情で
動きたくても動きが取れない状況にあるので
日本分子生物学会くらいしか声明を出せなかったのではないかとも思う。
それにそもそも個人ではなく機関としての理研
個別の学会等に対して説明しなければならない責任があるのだろうか?
学会が何を言おうと理研が動かなければ調査は進まない。
今回の事件の舞台である理研の発生・再生科学総合研究センターは
副センター長が疑惑の当事者である笹井芳樹という事情もあり
ラボノートの差し押さえのような強制力の伴う調査をしていなかった可能性が高い。
これでは学会があれこれ声明を出しても実効性が乏しいのは明らか。
強制力を持った調査権を有する「研究公正局」(日本版ORI)の設立が必要だろう。
恣意的な政治介入を避けるためには
会計検査院のように内閣と独立した機関とすれば良いではないか。

何時までも「口を出さずに金だけくれ」は通用しないと思う。