地獄のハイウェイ

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アルキメデスは周転円説を知っていたか?

 地動説と天動説の話になると、つい天動説≒周転円説と考えがちだが、よく考えてみると、アルキメデス(紀元前287頃~212頃)が知っていた天動説は周転円説ではない可能性が高い。というのは周転円説の最初の開拓者は、アルキメデスと並ぶ古代ギリシア数学の最高峰とされるアポロニオス*1(紀元前240頃~190頃、紀元前262頃~190頃説もあるようだ)と伝えられているからだ。二人には年代的には少し重なりがあるが、アルキメデス放物線の求積を研究していたにも拘らず、アポロニオスの『円錐曲線論』の成果を知らなかったようなので、アルキメデスが周転円説を知っていたと考えるのには無理がある。

 一方、アルキメデスの『砂粒を数えるもの』においては、昔の天文学者としてエウドクソスの名前を挙げているので、エウドクソスに始まる同心天球説を知っていたと考えて間違いないだろう。そうなると、アルキメデスにとっての地動説のライバルの天動説は同心天球説ということになる。

*1:数学の方ではラテン語での”アポロニウス”表記が標準的なようだ。