22日、阪大生命機能研究科の研究公正委員会は、
同研究科の研究チームの論文が取り下げられ、
共著者の助手が自殺した問題に関して、
責任著者である杉野明雄教授が
単独でデータの捏造・改竄したとする調査結果を発表したそうだ。
自殺した助手は論文の不正を告発していたという報道もあり
心ならずも捏造に巻き込まれたことを苦にして自殺した可能性もある。
また阪大生命機能研究科か、という声が聴こえて来そうであるが
程度問題の差はあれ他の大学でも似たような事件はあるのではないかと思う。
もちろん、研究発表においてデータの捏造・改竄はダメというのは当然なのだが、
法律違反や不正経理はダメなのは当たり前なのに蔓延しているのだから
データの改竄などは相当に広く見られる現象なのだと思う。
「少々インチキしたって上手くやればいい」あるいは
「卑怯なことをしても勝てば官軍」式の思考パターンに馴染んでいれば
研究不正に手を染めるのに必要な心理的バリアは極めて低いだろう。
そもそも、
過去の不正経理事件の報道後のリアクションで見られる
科学者に広く共有されているのではないかと疑われる
「データの捏造はNGだが、少々の不正経理はOK」という倫理的判断は、
説明されずに納得できるような代物ではない。
あえて言えばインチキで誤魔化そうとしている相手が
科学コミュニティーの内部(研究不正)か外部(研究費の不正)で
判断が分かれているのであるのかもしれないと思うが、
外部(一般市民)から見れば恣意的な境界に過ぎないと見なすべきだ。
それに、
他人のデータを許可なく盗み見て研究に役立てながら、
一般向けの回想録でそのデータの正当な持ち主をその死後に
「きつくてセンスの悪い女」と貶した人物が
未だに大した糾弾も受けずに、
科学立志伝中の大人物として語られる科学界が
倫理的にまともな場所だと信じている方が素朴に過ぎると思う。
※二重らせんのJ.D.ワトソンのこと(念のため)
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K_Tachibanaさんのブログサイト「科学コミュニケーションブログ」の
2006年09月23日付エントリ「阪大の「論文ねつ造・取り下げ・助手自殺事件」
http://blog.so-net.ne.jp/kagaku/2006-09-23
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