地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

ソーカル事件から論文捏造について妄想した

いわゆるソーカル事件というのは、
1996年にA.ソーカルという物理学者が
ポストモダニズムによる科学の引用がデタラメであることを告発するために、
ポストモダニズムの真似をしたデタラメ論文を作成して
「ソーシャル・テキスト」誌に投稿し、
デタラメ振りが見抜かれぬまま掲載されたことを
掲載直後に他の場所で告白したというものだ。

「ソーシャル・テキスト」誌というのは
カルチュラル・スタディーズという研究ジャンルの学術誌で、
当時はポストモダニズムとかのフランス現代思想にかぶれて
科学的な知識をも社会的な構成物とみなす認識的相対主義を基調としていたそうだ。
そういう認識的相対主義に反発する科学者サイドからの批判・非難に対して
反転攻勢よろしく「サイエンス・ウォーズ」なるキャンペーンを張っていて
その中でソーカルの罠に引っ掛かったというわけのようだ。

ソーカルの行為に対しては、
デタラメ振りが糾弾されたポストモダニズム思想家から
「研究者倫理に反している」式の(言い訳じみた)批判はあったが
科学者の反応は、認識的相対主義に対する反発もあったのか
「騙される奴が悪い」というのが大勢だったように感じた。

誰か気の利いた悪戯者がソーカルの真似をして
自然科学系の学術誌の査読システムの杜撰さを告発するために
意図的に論文捏造をやらかして、それを直後に告白したらどうなのだろう?
やっぱり「騙される奴が悪い」式の反応が大勢になるのだろうか?

告発であれば論文捏造でも「騙される奴が悪い」となるのだろうか?
ソーカルポストモダニズムをターゲットにしていたが、
特定の科学理論(敵対する学説とか)の我田引水振りや
特定の研究ジャンル(他を圧迫する巨大プロジェクトとか)の杜撰さを
告発することを目的に行われた場合にはどうだろう?

プロジェクトの終了で職を失い路頭に迷う羽目になった関係者が
雇用されていたそのプロジェクトの杜撰さを告発するために
でっち上げのデータで論文を投稿したりするなんて悪夢も妄想してしまう。

子供向けのヒーロー番組等でも
「正義の味方は悪い奴を騙してもOK」とする傾向の強い日本だが、
妄想であれば良いと思っている。