地獄のハイウェイ

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STAP騒動1周年に思ったこと

1年前の理研の記者発表から1周年になるので、
少し気になっていることを書いておこうと思う。
STAP細胞に関する2本のNature誌の論文には研究不正があり、
研究成果と称するものは実は虚構だったということなのだが、
これを小保方晴子という特異な人物の仕業と片付けるには
ちょっと釈然としないものがある。
それは早稲田大の信じがたいようなデタラメな対応で問題になった
小保方の学位論文とその基になった2011年のTissue Engineering誌の論文の
疑わしい研究に対する他の当事者達の態度に関する問題である。
その論文は成体の組織内に微小な多能性幹細胞が休眠状態で存在しているという
ヴァカンティが主張する"spore-like cell"(胞子様細胞)なる
極めて怪しげな仮説を実証しようとしたものだ。
学位論文もTissue Engineering誌の論文も研究不正のてんこ盛りのようだし、
研究内容もSTAP同様に虚構の可能性が否定できないが、
そもそもヴァカンティの"spore-like cell"自体が
他の研究者が全く再現していない代物のようだ。
実際、幹細胞研究者で"spore-like cell"を受け入れている人は極少数派だろう。
そういうことであれば、ヴァカンティの評判は芳しいものではないはずだし、
要注意人物と見なしてその主張には警戒して当たらなければならないはずだ。
ところが若山照彦笹井芳樹もヴァカンティの主張を疑ったようではないし、
ヴァカンティの「愛弟子」である小保方に何の警戒心も持たなかったかのようだ。
怪しげな研究成果を報告している連中に対しては懐疑的に接するのが
その分野で専門家として禄を食む者の矜持であり責務ではないかと思うが、
若山や笹井は言葉の悪い意味でナイーヴだったのだろうか?
幹細胞研究の分野ではヴァカンティの"spore-like cell"を始め
出澤真理のMuse細胞とか存在が疑わしいものが多数あるようだが、
研究者間の論争などもあまり活発でないようで、
もしかするとユルユルの業界なのだろうか?