地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

21世紀はバイオの時代か?

ヒトゲノム・プロジェクトのときには
医学の飛躍的な発展に寄与する可能性が謳われたが、
ドラフト版の完成が報じられたのは2000年で
そのときのアメリカ大統領がビル・クリントンだったのだから
クリントンの後任のブッシュが2期目を終えようとしている今、
どれだけの医療の発展に寄与があったか検証されても良いだろう。
そう考えたとき基礎医学やゲノム生物学の面はともかく
画期的な医療に結び付いた成果は寡聞にして知らない。

応用面を除いた純粋科学とでもいうべき面だけで考えるなら、
ヒトゲノム・プロジェクト(日本の貢献が少ないと批判された)も
イネゲノム・プロジェクト(これは日本がリーダーシップをとった)も
その価値にどれだけの差があるのかを明快に説明することは簡単ではないだろう。
世間的にヒトゲノム・プロジェクトが
イネゲノム・プロジェクトよりも価値があると思われているのは
特に医療関係を中心にした応用面の効果が期待されているからだろう。
(イネゲノムも食糧増産などの農業での応用が期待できないわけではない)
だがその成果はブッシュの次の大統領の任期中に世に出るだろうか?

例えば地方自治体の財政再建を公約にした知事とかの首長が
任期内に何の成果も挙げずに問題を先送りにしただけであれば
強く非難されるではないか。
投資効果を大いに宣伝しておきながら
それが回収できるのは10年あるいはもっと先と言うのなら
目先の研究成果の多寡に基づく競争などに
一体どれほどの経済的合理性があるというのだろう?
せめて特許の存続期間である20年(出願の日から)以内に
実用的な成果に結びつかなければ
国家間の経済的競争のための資金投入先としては不適格ではないか。
だからバイオ関係者が医療面での応用可能性について
誇張気味の宣伝をするのは個人的には好きではない。

そもそも仮にもっと長い目で見たとしても
バイオ産業で生まれた成果が医療面で使用されたとして
それがGDPの大きな部分を占めるようになるとしたら
医療費がとてつもなく大きくなることを意味するから
経済面で望ましい社会像とも思われない。