地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

バイオサイエンス

幹細胞研究者って科学的な真理の探究者なの?

小保方の手記の出版以来このところSTAP騒動が再燃しているようだし、更には小保方がSTAP事件以前に出していた論文が取り下げになったとか色々と新たな話題も出てきているようだ。 前にも少し書いたが自分はバカンティの胞子様細胞(芽胞様細胞)というのは限…

STAP事件でちょっと気になること

先日STAP事件でバカンティのことを書いたので 古い記事などを見直していたのだが、 そこでちょっと気になったことがある。 それはSTAP事件で研究不正疑惑騒動の分水嶺となった 博士学位論文画像の流用に関する件である。 NatureのArticleの方のFig.2e下段が…

そもそもバカンティってどうなのよ?

小保方晴子が『あの日』という手記を出版したそうだ。 ネットで紹介されている内容を見る限り自己弁護に終始したもののようだ。 http://bylines.news.yahoo.co.jp/enokieisuke/20160128-00053873/ http://delete-all.hatenablog.com/entry/2016/01/28/233622…

科学者への不信について、原発事故とSTAP事件

小野昌弘という人の 「放射能恐怖という民主政治の毒(11):煽られる不信・くすぶるデマ」 http://bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20150222-00042905/ という記事を読んで少し違和感を覚えた。 福島の原発事故でいわゆる御用学者というか原子力専門…

STAP騒動1周年に思ったこと

1年前の理研の記者発表から1周年になるので、少し気になっていることを書いておこうと思う。STAP細胞に関する2本のNature誌の論文には研究不正があり、研究成果と称するものは実は虚構だったということなのだが、これを小保方晴子という特異な人物の仕業と片…

榎木英介『嘘と絶望の生命科学』感想

いわゆるバイオ系の研究現場の問題点を指摘した書籍だが、 正直言うと色々な意味で違和感を覚えた。 著者はピペットを捨てたと自称しているが東大大学院中退後に 神戸大医学部に学士入学し医師免許に加え学位も取得し、 現在は病理医とは言っても近大で職を…

理学系とくにバイオ分野では博士課程へ進むのは無謀

科学技術・学術政策研究所から「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査」 http://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-postdoc2012-PressJ.pdf とうのが出たので見て驚いたのだが、博士課程に在籍する学生では理学系(5,178人)は工学系(13,…

真相解明はこれからだが期待しない方が良いのかも

報道によると小保方晴子がNatureのArticleの取り下げに同意したとかで STAP事件は一つの節目を迎えたようだ。 前にもちょっと書いたが犯罪組織が切り札のつもりで雇ったプロ(?)が プロとは名ばかりのとんでもなく出来の悪い成り済ましで その不始末から足…

生命科学系で研究不正が多いのには訳がある

分子生物学会理事長の大隅典子が自身のブログで 「科学者は競争的すぎる環境に付いていけない」という記事を書いている。 http://nosumi.exblog.jp/20620797/ 研究不正の問題の背景には競争環境の激化があり 生命科学系で研究不正が顕著に多いのは ポスドク…

余ハ如何ニシテSTAP懐疑派トナリシ乎

STAP細胞スキャンダルの件についてだが、 自分は当初、理研のプレスリリースを真に受けて 「世紀の大発見!」などと興奮していたが画像加工の噂が出てからミスコンダクトを確信してからも それでも「画期的な研究内容」だと思っていたが、 今では全く信用して…

もっと科学を!

STAP細胞事件が切っ掛けで 素人ながら幹細胞研究とかリプログラミングについて ちょっと調べてみたのだが 多能性獲得とか未分化状態維持のメカニズムとかは まだまだ詳しくわかっていないところが多いようだ。 ところが再生医療とかそっち方面の応用の期待か…

STAP細胞は応用の話し抜きに世紀の大発見

今朝の読売の朝刊のトップは、 理研の小保方晴子ユニットリーダーによるSTAP細胞の話。 これは本当に凄い発見だと思う。 何しろこれまでの生物学の常識を覆して、 哺乳類の分化した細胞を遺伝子導入なしに、 外部からの刺激でリプログラミングしたというのだ…

日本の科学系の人材育成を憂うならバイオ関連予算を減らせ

これまで何度も言っているのでちょっと食傷気味なのだが 基本は「バイオは産業界での就職は極めて困難」 https://katsuya-440.hatenablog.com/entry/56410306 あるいは「バイオ系博士の窮乏はアカデミアの自業自得かも」 https://katsuya-440.hatenablog.com…

バイオバブルの崩壊はそうだとしても

井上晃宏という人の「ポスドク問題とは、バイオバブル崩壊の結果である」 http://agora-web.jp/archives/1309215.html http://blogos.com/article/10558/ という記事を読んだ。 この記事は去年の4月の記事のようだが 自分が2008年に書いた 「バイオは産業界…

大阪市のOBIへの支援打ち切り報道について

大阪バイオサイエンス研究所(OBI)への補助金の打ち切りを 大阪市が検討しているらしい。 1980年代に欧米の後塵を拝していた日本のバイオサイエンス分野の 突破口を開く存在として周囲の期待を集めていたこともあって、 OBIと隣にある蛋白工学研究所(PERI…

予算確保のために大風呂敷を広げる人達

最近「老化とか寿命は研究費的に難しくて人気がない」とか書いて 自分の研究テーマの斬新さを宣伝しているブログを見かけた。 何でも老化研究のモデルに分裂酵母を使うのだとかだそうだ。 自分自身は老化研究に係わっている訳ではないが、 製薬会社とかが老…

Difficult to cure

日本学術会議の基礎医学委員会が 「生命系における博士研究員(ポスドク)並びに任期制助教及び任期制助手等の現状と問題」 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t135-1.pdf という提言をまとめたようだ。 提言というものの、35ページの本文の…

バイオ系博士の窮乏はアカデミアの自業自得かも

ポスドクは本来は自分で論文を書く一人前の研究者だが、ライフサイエンス/バイオ系では、ネットスラングで「ピペド」と呼ばれるような、研究者というよりも研究補助者扱いを受けているらしい。 日本は基礎科学の中でもライフサイエンス系が欧米より遅れてい…

バイオは近代科学ではないのかも知れない

先日の「適材適所ならバイオ系は工学系技術者に相応しいとは言えない」 という記事を書いた後で見つけたものなのだが、 生化学若い研究者の会の「ポスドク問題の解決:後編 理工系教育の見直し」 http://www.seikawakate.org/archives/777 という2009年12月2…

適材適所ならバイオ系は工学系技術者に相応しいとは言えない

榎木英介「博士漂流時代」を読んだ。 内容に関しては自分がこれまで言ってきた論点と共通するものも多く、 特に異論を言うべきことは、ほとんどないのだが、 あえてはっきり言っておいた方が良いと思ったことが一つだけある。 それは第4章の「博士は使わない…

バイオ分野に優秀な人材を集中しない方が良いかもしれない

製薬業界において「2010年問題」と呼ばれる問題があることは、 ご存知の方も多いだろう。 これは2010年前後に大手メーカーの主力製品の特許切れが集中するために、 製薬メーカーの経営が苦しくなるかもしれないという話だ。 大型新薬が生まれにくくなってい…

昨年のノーベル化学賞はリボゾームなんだけど

Yahoo!のニュース欄を見ていたら、 2月10日21時24分配信の毎日新聞記事で 「<第三の酵素>筑波大チームが発見 たんぱく質とRNA協力」 と言うのを見掛けた。 「RNAとたんぱく質が協力して一つの酵素のように働き、分子を排除することが分かった。こう…

基礎科学は基礎数学よりも金を掛けるべきか

K_Tachibanaさんの「基礎科学は基本的にバラマキ」という記事 http://sciencecommunication.blog.so-net.ne.jp/2009-10-27-2 を見て思ったのだが、基礎科学(特にバイオ系)は、 さんざん「役に立つ」とか言ってきたツケが回ってきているようにも思える。 フ…

卒業生を大事にしているか?

天文学が人気あるというのは先日も書いたが 熱心な天文ファンというのはどのくらいの人数なのだろうか。 「天文ガイド」が公称8万部だそうだから、 自分の天体望遠鏡で星空を観測するようなコアなファンは 10万人程度といったところなのだろう。 ところで、…

ES細胞研究で国際競争に負けたら本当に困るのか?

オバマ政権のヒトES細胞研究助成の解禁後に、 「このままでは国際競争に負けてしまう」というような言説が マスコミの一部から出てきているようだ。 (3月11日付毎日新聞社説、3月21日付読売新聞社説等) 研究者が国際競争に負けたくないのは当然だとしても…

ES細胞研究助成解禁のもたらすもの

報道によるとアメリカのオバマ大統領が週明けにも、 ブッシュ政権時代に禁じられていた ヒトES細胞(Embryonic Stem cells:胚性幹細胞)研究への 助成を解禁する大統領令に署名するそうだ。 ES細胞研究が再生医療の進展に繋がるとか そういう期待があること…

Cell Nante Shiranai

物性系の研究者としゃべっていた時にマンガの話題になり、 荒木飛呂彦がCellの表紙を飾った話をしたら 「Cellって何?」と聞かれた。 インパクト・ファクターの大きい細胞生物学系の雑誌だと言うと 「ごめん、知らないわ」と言われてしまった。 生命科学系だ…

ダーウィンとバイオ・サイエンス

今日2月12日はチャールズ・ダーウィンの生誕200年だそうだ。 もちろんダーウィンの業績は非常に素晴らしいものであると思うが、 現代の生物学的研究のどのくらいの割合がその知的遺産を相続しているのだろう? もちろん嫡流である進化生物学は遺産の100%を…

国威発揚でも産業貢献でもなく

大「脳」洋航海記のvikingさんが、 自分の「役に立たなくても面白いものを」に対して "「国民の科学」を目指しても問題は解決しない" http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=2021 というトラックバックを送ってくださった。 訪れる人もまばらな過疎地ブ…

どんな分野にポスドクは多いのか

ポスドク問題を考えるときには、 分野によって状況が異なるので注意が必要だ。 それでどんな分野にポスドクが多いのか調べてみた。 文部科学省 科学技術政策研究所の 「大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査-平成17年度調査」 http:…