地獄のハイウェイ

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ポスドクは何が優秀なのか

ネットでは高学歴ワーキングプアがどうだとか
博士は役に立つだの立たないだの、といった議論があって
そういうのとポスドク問題が一緒くたにされている感があるが、
関連がないとは言わないまでも、分けて考えて欲しいと思う。
自分の知っている範囲でしか物事は語れないが、
一部で例外があるのはともかくとして、
ポスドクをして2巡目3巡目に入った人は、
基本的に優秀であると見てよいと思う。

ただしその優秀さは研究すること、
ありていに言ってしまえば、
研究論文を生み出すことに置いてである。
それ以外の能力はポスドクの評価の中心にはない。

ポスドクの任期は様々だが3年くらいが多いようだ。
博士を取って出身研究室を離れたら研究テーマを替えることになるから
最初の一年程はそのテーマについて勉強しながらの研究になる。
分野にもよるがこの時期に、以前の仕事絡みで論文を出すことはできても
雇われている研究テーマで筆頭著者の論文が出せる人はほとんどいない。
新しい研究テーマで論文が出せるようになるのは2年目からになるだろうし、
装置開発系の仕事をしているポスドクなら、
新装置の設計製作が2年目になったりするから、
論文が2年目の後半に出れば早いほうだろう。
一方で次のポスドクの口を捜すとなると
今のテーマでの自分の成果をアピールしなければならない。
ポスドクを雇う側は、それまでのポスドクの仕事を評価して
自分達にとって使えそうでなければ雇わない。
だから3年目の後半には自分の成果として見せられる論文がある程度必要だ。
こういうことがクリアできたからこそ、
ポスドク2巡目3巡目でも生き延びているのだから、
そういう人は研究論文の生産力においては優秀であるというのは間違いない。
ただし論文ではなくデータ収集に雇われているようなポスドクの場合は、
(大型プロジェクト周辺でこういう人がいる)
残念ながら上の議論は当てはまらない。

それなりに優秀なポスドクがいる一方で
新卒博士でポスドクになっても中々論文が出ずに期限が来てしまって
次のポスドクの口が無くて周囲が困ってしまうケースもある。
そういう人達はポスドクを続けることが難しいので他の就職を探すことになる。
しかし研究者としての能力である程度勝ち抜いてきたのに
転進を考えなければならない人と
研究者としてイマイチ能力不足で転進しなければならない人の話を
一緒くたにしてはまとまる議論もまとまらないだろう。