地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

ポスドク問題

もしかして「無職お断り」か?

知っている人には今更だが、転職しようとしている研究者に研究系の求人情報を紹介する科学技術振興機構が運営するJREC-IN Portalというのがある。次のポストを探すポスドクも当然のこと、求職者側としてこれを利用するわけであるが、求職者ユーザーとして登…

博士課程進学者の減少について

国内の大学院で博士課程への進学者数が減少していることについて、我が国の研究力の低下に繋がることを心配する声を一部で見掛けたりする。そういう背景もあってなのか昨年末には文部科学省が博士課程進学者1万5000人に生活費相当額の支援を行うという政策を…

企業研究者には在野研究者の自由はない

今年のノーベル化学賞で旭化成名誉フェローの吉野彰さんが受賞したので、ちょっと思ったことを書く。 吉野さんは2017年から名城大学の教授を務めているので、現在はアカデミアにも籍があるわけだが、それまでは基本的にはノンアカデミックなキャリアだっだわ…

西村玲さんの自死を巡る報道への違和感

4月10日付の朝日新聞の記事 「文系の博士課程「進むと破滅」ある女性研究者の自死」が発端になって 文系博士の就職難があれこれと取りざたされている。 若くして業績が表彰されていた西村玲さんの自死の理由が 「多くの大学に就職を断られ、追い詰められた末…

榎木英介『嘘と絶望の生命科学』感想

いわゆるバイオ系の研究現場の問題点を指摘した書籍だが、 正直言うと色々な意味で違和感を覚えた。 著者はピペットを捨てたと自称しているが東大大学院中退後に 神戸大医学部に学士入学し医師免許に加え学位も取得し、 現在は病理医とは言っても近大で職を…

理学系とくにバイオ分野では博士課程へ進むのは無謀

科学技術・学術政策研究所から「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査」 http://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-postdoc2012-PressJ.pdf とうのが出たので見て驚いたのだが、博士課程に在籍する学生では理学系(5,178人)は工学系(13,…

過ぎたる謙譲は愚弄に近し

今朝の読売新聞の書評欄で須藤靖という人が 「窓際科学者を自認する」とか書いていた。 (笠井献一『科学者の卵たちに贈る言葉』の書評) 肩書きを見ると東大の教授なので何を言っているんだと思った。 それで須藤靖について調べてみた。 まず受賞についてみ…

バイオバブルの崩壊はそうだとしても

井上晃宏という人の「ポスドク問題とは、バイオバブル崩壊の結果である」 http://agora-web.jp/archives/1309215.html http://blogos.com/article/10558/ という記事を読んだ。 この記事は去年の4月の記事のようだが 自分が2008年に書いた 「バイオは産業界…

研究者は個人事業主でやれるか?

たまたま理研のオミックス基盤研究領域の バイオインフォマティクス解析のテクニシャン(?)の募集をみたら 「契約形態は、個人事業主との契約が原則」とあった。 http://www.osc.riken.jp/news/081225/qual01.html どうしても今ある体制の中でしか発想でき…

「夢」を「恋」に置き換えて

最近知ったのだが、モーニングの編集長である島田英二郎氏の 「「あきらめなければ夢は必ずかなう」ほど悪質な言説はない」 というツィッターでの発言が2ヶ月ほど前に話題を呼んでいたようだ。 http://togetter.com/li/265933 それでふと思ったのだが 「あき…

円城塔氏芥川賞受賞

数年前に「ポスドクからポストポスドクへ」 http://ci.nii.ac.jp/naid/110006825822 という記事で話題になった円城塔氏が芥川賞を受賞とのこと。 円城氏の本名非公開と言うことだが、 ちょっと調べたらすぐに分ってしまった。 そういう点でネット情報は結構…

競争率の問題じゃなくてリスクの問題

若手研究者のポストを巡る競争の激しさとかそういった話題になると 「誰もが憧れの職業に就けないのは当たり前」とかの意見を見掛ける。 それはプロスポーツでもエンターテインメント業界でも似たようなものだろう。 ただそういう大雑把な比較だと見逃されて…

脱落者の方が多数派なのに

菊池俊郎「院生・ポスドクのための研究人生サバイバルガイド」を読んだ。 若手に向けたアカデミアで研究者として生き残るための助言ということで 内容そのものは割と常識的なもので読んで損ということはない。 しかし本書のp.20のFig.1-05という表の博士課程…

アカデミア周辺で生きる

先日の「漂流する博士は定着できるのか?」で書いたことの続きで少し考えた。 アカデミアからの転進組が 完全なノンアカデミックな職場で正規雇用で定着できるのかというと、 それは難しいということになる。 そうなると契約社員とか派遣社員とかいった 「非…

Difficult to cure

日本学術会議の基礎医学委員会が 「生命系における博士研究員(ポスドク)並びに任期制助教及び任期制助手等の現状と問題」 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t135-1.pdf という提言をまとめたようだ。 提言というものの、35ページの本文の…

ポスドク問題に冷淡な大学人って少なくないよね

人数だけ見たらポスドク問題とFランク大学問題だったら 後者の方が圧倒的なマジョリティーだろう。 予算規模、少なくとも競争的資金の配分から見たら全く逆だろう。 文科省のような行政側の立場から見たら、 予算中心で考えるのか人数重視で考えるのかで 大…

バイオ系博士の窮乏はアカデミアの自業自得かも

ポスドクは本来は自分で論文を書く一人前の研究者だが、ライフサイエンス/バイオ系では、ネットスラングで「ピペド」と呼ばれるような、研究者というよりも研究補助者扱いを受けているらしい。 日本は基礎科学の中でもライフサイエンス系が欧米より遅れてい…

本当に難しいのは高齢ポスドク問題

アカデミックな世界であろうとショービズだろうとプロスポーツであろうと、 憧れてその世界に飛び込んだ全ての人達の夢が叶うわけではないことは、 誰だって頭では分かっているだろう。 実力や才能がなかったりあるいは運がなかったりしたら その世界からど…

安易に起業しろって言わないで

たまに博士問題とかポスドク問題で 「ポスドクは起業すべきだ」というような意見を見かけることがある。 社会に打って出る気概を求める叱咤激励の類だとは思うが、 あまり安易に言って欲しくないと思う。 実際に起業に取り組んでいる人達にはもちろん頑張っ…

しっかりしてぇや大阪府!

大阪府に「バイオ人材マッチング推進委託事業」というのがある。 http://www.pref.osaka.jp/bio/bio-jinzai-hurusato/index.html 上手く行く行かないはともかく事業の趣旨は悪くないけれど、 頭の痛くなる記述を見つけてしまった。 「バイオベンチャーなど、…

ある羊頭狗肉の告白

林幸秀「理科系冷遇社会」(中公新書ラクレ)というのを読んだ。 表題はかなりどぎついものだが、それが焦点と言うよりも、 どちらかというと日本の科学研究の現状を白書風にまとめたもの。 それもそのはずで著者は 2003年、文部科学省科学技術・学術政策局…

首都圏の普通作業員 ○ - ● 研究支援パートタイマー(博士)

国土交通省の「公共工事設計労務単価」というものがある。 http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/const/market/roumutanka/top.html 公共工事の工事費積算のために調査して決定されるものだそうだ。 Q&Aを見ると学生アルバイト、見習いでも対象に含まれるとの…

学振特別研究員が企業に就職するのを悪く言わんといて

「科研費の一部執行停止および募集停止に対する反対署名」というのがあるようだ。 http://www.shomei.tv/project-1343.html そういう反対行動を起こす人がいても良いと思うし そういう運動をする人の勇気や行動力は評価するものの、 自分はこの署名に賛同す…

ところで研究職派遣ってどうなの?

ポスドク問題の出口として研究職派遣というのがあったりしたが、業種や派遣先によって相当に違うと思うが、実際のところは研究職よりも研究補助職(テクニシャン)が多そうな印象を持っている。 例えば読売の発言小町の次のようなスレッドを見てもそういう印…

ちょっと嫌な事

科学技術振興機構がやっているJREC-INという求人公募情報データベースがあるが、 先日、日本ホメオパシーグループのホメオパシー研究所(株)の求人が載っていた。 http://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=0&id=D109101177&ln_jor=0 ホメオパシーは…

ダグラス・プラッシャー

今朝の読売新聞のノーベル賞特集に ダグラス・プラッシャー(Douglas Prasher)に関する記事が出ていた。 GFPの遺伝子を同定し配列を決めた研究者だったが、 科学者としての職を失い、現在は時給10ドルで トヨタ系の自動車販売会社の送迎(送迎バス?)運転員…

ポスドクの募集が埋まらないこともある

何かとポスドクの行き場がないという話が多いが 一方でポスドクの募集を掛けても中々埋まらないという話もある。 特定の知識や経験を要求しているため応募者がいても採用に至らないとか、 そういう話がないわけではない。 もちろん分野や組織にもよるので、 …

どんな分野にポスドクは多いのか

ポスドク問題を考えるときには、 分野によって状況が異なるので注意が必要だ。 それでどんな分野にポスドクが多いのか調べてみた。 文部科学省 科学技術政策研究所の 「大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査-平成17年度調査」 http:…

ポスドクは何が優秀なのか

ネットでは高学歴ワーキングプアがどうだとか 博士は役に立つだの立たないだの、といった議論があって そういうのとポスドク問題が一緒くたにされている感があるが、 関連がないとは言わないまでも、分けて考えて欲しいと思う。 自分の知っている範囲でしか…

セカンドキャリア

ポスドクや博士号取得者のセカンドキャリアのことを スポーツ選手の引退後のそれに喩えるような議論があるが、 正直言って自分は好きではない。 それはスポーツ選手の場合は オリンピック金メダリストなどの勝ち組というか、 その頂点を極めたトップクラスの…