地獄のハイウェイ

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バイオ系博士の窮乏はアカデミアの自業自得かも

 ポスドクは本来は自分で論文を書く一人前の研究者だが、ライフサイエンス/バイオ系では、ネットスラングで「ピペド」と呼ばれるような、研究者というよりも研究補助者扱いを受けているらしい。

 日本は基礎科学の中でもライフサイエンス系が欧米より遅れているという評価を紹介していたサミュエル・コールマン「検証 なぜ日本の科学者は報われないのか」(原著1999年)をちらちら読み返していて気がついたのだが、日本の研究者1人当たりのテクニシャンを含むサポートスタッフは0.5人未満で、ライフサイエンス系は特に少なく0.23人だという記述があった(邦訳37ページ)。

 一方で、ポスドクの所属分野を調べた2005年頃の調査では、ライフサイエンス系が40.7%と群を抜いて多いのだ。

katsuya-440.hatenablog.com
また生化学若い研究者の会の
ポスドク問題の解決:前編 産業構造に応じた博士課程定員の調整」
http://www.seikawakate.org/archives/776
によると単年度の博士課程に在籍する約15000人のうちバイオ系博士が約8000人と
博士課程在籍者全体の半分以上を占めている。

 1990年代には窮乏に喘いでいたライフサイエンス/バイオ系分野で、2000年代になってポスドクや博士課程の学生が他分野を圧倒するまでの急激な量的拡大を遂げたわけだ。

 もちろんライフサイエンス/バイオ系の量的拡大は、ヒトゲノムプロジェクト(ドラフト版の完成が2000年)での日本の貢献が少なかったことの、政策的反省によるてこ入れによるものもあるには違いない。
 しかしこのような政策的てこ入れは、アカデミア側からの働き掛けなしにはあり得なかっただろう。それまで不足していた研究支援者の供給を増やすというのが、このライフサイエンス系ポスドク増加の目的であったのかもしれない、と言うとさすがに言い過ぎだとは思うが、アカデミアが自分達の分野の拡大のことしか頭になくて、ポスドクと大学院生の増加を推進したのだから博士の過剰問題もある意味自業自得なのかもしれない。