地獄のハイウェイ

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例えば医療問題では物理学者や化学者は一般市民でしかない

以前に「科学者と一般市民しかいないのか?」という記事を書いて、
科学コミュニケーション等の分野の一部で見られる、
科学者vs.一般市民という2項対立の図式への不満を述べたことがある。

考えてみると一般市民というのは問題によって変わってくる。
例えば薬害等の医療問題であるなら、
職業的研究者ではない開業医とか、
あるいは薬剤師や臨床検査技師などのコ・メディカルスタッフの方が
物理学者とか化学者よりも圧倒的に職業的専門家である。
あえて比較をすれば毒物に関する知識のある化学者の方が
理論系の物理学者よりも医療問題では理解があるかもしれないが
それでも獣医師と比べて上回っているかどうか保証の限りではない。

仮に一般市民を職業的研究者でない人達と規定しまうと、
医療関係者よりも専門的知識が欠けている他分野の職業的研究者の方を
医療関係の研究者と同じ科学者側に入れてしまい、
医師ギルドの構成員である開業医を一般市民側に組み込んでしまうという
かなり滑稽な図式が出来上がってしまう。
もちろん中には医療問題でも高度な知識を持つ物理学者とかもいるだろうが、
それは例外中の例外であり、
結局のところ医学研究者で物理学に造詣が深い人物のようなものだ。

考えてみれば法律問題や経済・経営問題では
自然科学者は唯の一般市民だ。
科学者/一般市民という2項対立は、
本来連続的なものを便宜的に二分したものであるだけでなく
また問題を変えれば切れ目の変わる多面性を無視したものだと言えるだろう。