地獄のハイウェイ

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技術士と博士を関連付けよう

昨夜の記事(医師や弁護士に相当するのは博士ではなく技術士だろう - 地獄のハイウェイ)の続きで、
技術士と理学・工学分野の博士の間の関連付けについて考える。

医師や弁護士のような無資格者の業務を排除するような
独占的な地位が技術士には与えられていないとはいうものの、
実務面の能力を国によって保証されているという点では、
社会的には価値が認められた資格だと思う。
(世間的な知名度が低いのは非常に残念だと思う)

一方、理工系の博士(特に理学系)については
「専門の研究は出来るのかもしれないが実務能力に乏しい」といった
ネガティブな評価がつきまといがちだ。
(この評価が妥当か否かについては、ここでは議論しない)

もしも実務能力があるのにネガティブな評価を受ける事態を回避しようとするなら、
博士号取得者が技術士の資格をとるというのも手だと思う。

ところが現行の制度では、
博士であってもなくても技術士になる上で何の優遇措置もない。

現在の制度では
技術士第一次試験(技術士補の資格試験)の受験科目

(A) 基礎科目(科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題 )、
(B) 適性科目(技術士法第四章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適性を問う問題)、
(C) 共通科目(技術士補として必要な共通的基礎知識を問う問題)、
(D) 専門科目(受験者があらかじめ選択する技術部門に係る基礎知識及び専門知識を問う問題)

のうち(C)の共通科目については、理科系統の専攻分野の学士なら免除されるが、
それは博士号取得者でも学部卒と同じ扱いということだ。
一方、JABEE認定のコースの卒業生なら、
無試験で第一次試験合格者と同等に扱われる。

また技術士第二次試験の受験資格の実務に従事した期間に関する要件、

(1) 技術士補に登録し、技術士補として通算4年を超える期間技術士を補助したことのある者。
(2) 技術士補となる資格を有した日から、科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者の監督のもとに当該業務に従事した期間が通算4年を超える者。
(3) 科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務に従事した期間が通算7年を超える者。(技術士補となる資格を有した日以前の従事期間も算入できる)

について大学院の期間を有する者は、2年を限度として、その期間を短縮することができるが、
これだと博士の学位があっても修士卒と同じ扱いしか受けない。

現行の技術士試験では博士が修士卒や学部卒と比べて
科学技術に関する専門的能力が高いという扱いを受けていない。
専門分野に関して博士が修士卒や学部卒と同じレベルとは全然思えないから、
是非とも制度を改善して欲しいものだと思う。

具体的な提案としては技術士第一次試験で、
博士が専攻した分野と対応する技術部門を受験する場合は
(A)基礎科目、(C)共通科目、(D)専門科目の3つを免除、
専攻とは異なる技術部門を受験する場合は
(A)基礎科目、(C)共通科目の2つを免除、
技術士第二次試験の受験資格要件については
(1)と(2)については最大3年、(3)については最大5年まで短縮できるようにする、
といった博士優遇が良いのではないかと考えている。
第二次試験でも
博士が専攻した分野と対応する技術部門を受験する場合は
筆記科目のうち必須科目を免除しても良いかもしれない。

あとポスドク経験者は博士よりも更に優遇して
大学院での期間とは別にポスドク期間を2年を限度として期間を短縮、
つまりポスドク経験者は第一次試験の合格と同時に第二次試験の受験資格を付与するとか、
そういうのも考えても良いのではないだろうか。

理工系博士を技術士という資格と関連付けただけで
色々な問題が解決するなどとは全く思っていないが、
博士の専門的知識・能力を社会にとって役に立つ方向に誘導する一助にはなるのではないか。