地獄のハイウェイ

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高校で習う程度の物理が出来る人の頻度

東工大の牧野淳一郎教授の『原発事故と科学的方法』が評判を呼んでいるらしい。
高校で習う程度の物理の知識による計算で
福島原発事故の規模が見積もれたということで非常に面白そう。
それは読んでからのお楽しみとして、
「高校で習う程度の物理」でも市民には荷が重すぎる式の感想があるらしい。
平均的な市民の大部分は高校物理が身に付いてないのかもしれないが、
そのぐらいは出来る人は取り立てて珍しいわけでもなかろう。
少なくとも理工系の大学進学者は高校物理は習っただけでなく、
理解できていると考えて良いのではないだろうか。

それで総務省統計局のデータ(http://www.stat.go.jp/data/chouki/25.htm)で
あれこれ調べてみた。
牧野さん(1963年生)と同世代の義務教育修了者の大学進学率(1981年)は25.7%で、
当時の4年制大学の専攻別の割合は理学3.2%、工学22.5%で併せて22.5%。
だから同世代の中学卒業者の5.8%が
4年制大学の理工系(農薬医は含まない)に進学していることになる。
(因みに医学歯学系は専攻割合4.2%なので、同世代の100人に1人程度)
ざっと40人学級で2人強といったところの人達は、
「高校で習う程度の物理」は十分にマスターできているはず。
総務省の2011年の調査では余暇にサッカーをやる人が5.8%だったので、
高校物理が理解出来る人は趣味でサッカーをやる人程度いることになる。

更に調べると、
牧野さんと同じ世代の大卒者の大学院進学率(1985年)が5.5%で、
同世代全体の1.4%が大学院に進学している。
(現在は大学進学率、大学院進学率とも牧野さん世代よりも大きく上昇している)
当時の修士課程の専攻別の割合は理学9.1%、工学42.9%で併せて52.0%。
だから全体から見て同世代の0.7%強が理工系修士に進学と言う訳だ。
これは140人に1人の頻度であるから1学年4クラスなら学年に1人程度はいる。
高校レベルはもちろんのこと大学初年級の物理も会得している人は
医者や歯医者よりちょっと少ない程度だから、
その辺の市民が十分に出会える程度の頻度だと言える。

一般市民の立場で考えれば、
たとえ本人が計算できなくても、ちょっと周りを探せば
牧野さんが期待している程度の計算が出来る人を見つけることは、
十分に可能ではないだろうか。