先日の「適材適所ならバイオ系は工学系技術者に相応しいとは言えない」
という記事を書いた後で見つけたものなのだが、
生化学若い研究者の会の「ポスドク問題の解決:後編 理工系教育の見直し」
http://www.seikawakate.org/archives/777
という2009年12月29日の記事があって、
自分が指摘したようなバイオ系の問題点が当事者からも指摘されている。
少し引用してみよう。
「企業研究者には高い専門能力も重要であるが,それ以上に,スキルチェンジにたえられる理工系人材としての汎用性の高さが必要なのである.このとき役に立つのが,学生時代に学んだ理工系基礎学力だ.ところが,とりわけバイオ系博士はそれらの知識が十分ではなく,スキルチェンジに対応することがむずかしい.」
「工学の基礎である物理に注目しよう.バイオ系の学生は高校で物理を履修していない場合が多く,大学進学後も物理をほとんど学ばない.」
「たとえば "ドップラー効果" など,日常的な物理現象すら知らないバイオ系博士もめずらしくない.これは東京大学にかぎった話ではなく,ほかの大学でも枚挙にいとまがない.」
ドップラー効果も知らないようだと、
世間一般の科学者イメージからの乖離も大きく、
科学技術コミュニケーターとしても厳しいように思う。
若い研究者の会の提言のように、
カリキュラムの改革が必要だとは思うが、
一方で、これまでのカリキュラムで物理学が軽視されてきたのは、
単なる偶然によるものではないように思う。
というのは、
物理の知識が乏しくてもこれまで支障なく研究が行われてきたのだから。
つまり、
バイオ系はその学問体系に不可欠なものとして、
物理学を組み込んでいるわけではないのだろう。
分野にとって不可欠の知識や能力であれば、
それが欠けているような「博士」を作り出すはずはないのだから、
バイオ系の科学の在り方そのものに根ざした問題なのだろう。
そう考えるとバイオ系は物理学を基礎としない分野なのだ。
近代科学とは17世紀科学革命で成立した
物理学を中心にした諸学のことであるのだから、
バイオサイエンスは近代科学ではないのかも知れない。