地獄のハイウェイ

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物理や工学に背を向けた科学思想史の価値はあるのか?

数日前に科学思想史家の金森修という人が亡くなった。
日本では数少ないカンギレムなどのフランス系の科学思想の専門家でもあり
サイエンス・ウォーズを論じたりして結構有名だった人のように思う。

数年前に金森が編纂した『科学思想史』(勁草書房
http://www.keisoshobo.co.jp/book/b67833.html
という本が出たときに購入しようかと思って手にとったのだが
大意「物理学は既存の研究で良く取り上げられているから扱わない」云々
というような文書を見掛けて強く失望して購入をやめたことがある。
金森本人の興味が医学周辺の生命科学にあるので
専門外の物理や工学・技術に首を突っ込まなかっただけなのかもしれないが
フランス系の科学思想の中でも例えばバシュラールは明確に物理学を論じているのだから
自分にはある種の逃げあるいはタコツボ的根性に見えた。

厳しい評価をすることになるが
科学の世界における思想的なデファクトスタンダードとでも言うべき物理学や
科学・技術の現実の世界への支配的影響力の中核である工学などを抜きにした
「科学思想」あるいは「科学思想史」にどれだけの価値があるのか疑問に思った。