地獄のハイウェイ

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蒙古襞と蒙古斑

 よく知られていることだが、北方モンゴロイド(寒冷地適応したモンゴロイド)の形質的な特徴としてあげられる蒙古襞(目頭の襞)というのがある。北方モンゴロイドの平坦な顔と一重瞼の細い目は凍傷を防いだりして寒冷な気候に適応した形質だというのは納得しやすいものである。蒙古襞は目が小さく見えるので近年は美容整形で切開の対象になったりしているようだが、眼球の露出を防ぐ機能を持っている可能性があるので、適応的形質である可能性がある一方で、寒冷地適応で鼻が低くなったことの単なる副産物の可能性もある。例えば鼻梁が低いアフリカのコイサン人にも目頭の襞が見られるが、こちらは寒冷地適応とは思われない。一見適応的に見える形質が、本当に適応的なものであることを確かめることは案外と難しい。

 蒙古襞と同様に北方モンゴロイドの形質的な特徴としてよく知られているものに、乳幼児の尻に出る蒙古斑がある。これは何かの適応的形質だろうか?このような形質が何らかの自然淘汰の対象となっているとは考えにくいし、蒙古斑は多くの人では思春期前までに消えてしまうので性選択によって進化した形質とも考えられない。

 ある人種の特徴的な形質が全て適応的と考えるような適応主義はちょっと行き過ぎで過剰解釈の類だと思うが、何でも説明をつけたがる人の陥りがちな悪弊だと思う。