地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

進化論

”Adapted” vs. "Adapting"

これまでも進化心理学についてあれこれ批判的な意見を言ってきたが、ちょっと調べてみると、自分のような小物があれこれ論ずる以前に、厳しい批判が出ていたことを知った。 進化心理学をどういう研究プログラムとして特徴づけるかであるが、提唱者であるL.コ…

唾液アミラーゼに見る人類集団の差

唾液アミラーゼといえば、小学校の理科の授業でも取り上げられるようなポピュラーで古典的な消化酵素だが、遺伝子のコピー数に人種差というか民族集団で差があるという報告が出ていることを知った。 Perry G.H. et al., "Diet and the evolution of human am…

ハゲは適応的か?

イギリスで「ハゲ」という罵り言葉がハラスメントと認定されたという記事が出て、少し話題になっている。よく知られているようにハゲ(脱毛症)には性的な偏りがあるので、「ハゲ」という侮蔑は「本質的には性別に関連している」ので、セクシャルハラスメン…

進化心理学への不信感の理由

進化心理学と呼ばれるものが何となく胡散臭く思えて仕方なくなって10年近くたつのだが、その不信感の理由がようやく自分なりに説明できるようになった。その理由とは進化心理学は正統的な進化論から見て不健全だということだ。 まず最初にはっきりさせてお…

人種は存在する

DavitRiceさんの「人種は存在しない…のか?」という記事を見て、社会学方面では人種が存在しないというのが「科学的立場」だという言説があるらしいことを知った。 davitrice.hatenadiary.jp この記事は人種概念が、人種主義(レイシズム)による社会的構築…

蒙古襞と蒙古斑

よく知られていることだが、北方モンゴロイド(寒冷地適応したモンゴロイド)の形質的な特徴としてあげられる蒙古襞(目頭の襞)というのがある。北方モンゴロイドの平坦な顔と一重瞼の細い目は凍傷を防いだりして寒冷な気候に適応した形質だというのは納得…

科学が誤解される現場

垂水雄二『科学はなぜ誤解されるのか』(平凡社新書)を読んだ。 タイトルに掲げられた問題についてはそれほど掘り下げられているわけではなかった。 著者はドーキンスなどの進化論関係の翻訳などで知られる科学ライターなので 第四章「誤解されるダーウィン…

「進化心理学の擁護-批判の論駁を通じて」を批判する

今日たまたま中尾央さんという総研大の助教の人の「進化心理学の擁護-批判の論駁を通じて」(『科学哲学』46(1): 1-16)を読んだ。哲学者が科学研究上の研究プログラムを擁護しているのを興味深く思ったが、残念ながら非常に問題が多いと感じたのでメモ的に…

斎藤成也「ダーウィン入門」感想

ちくま新書の斎藤成也「ダーウィン入門」を読んだ。 著者は日本進化学会設立発起人というか中心人物の一人で、 現在は会長(2010-2011年)を務める、 日本を代表する進化生物学者の一人だ。 これまで出版されたダーウィン紹介本の多くは、 いささか贔屓の引…

S.J.グールド vs. R.ドーキンス

「サイエンスカフェ神戸」という催しで 「進化論を語ろう!ドーキンスとグールド、どっちがエライ?」 http://scicafe.h.kobe-u.ac.jp/schedule/273.html というサイエンス・カフェ(ゲストの戸田山さんは哲学者では?)があるらしい。 自分は進化生物学の研…

内井惣七「ダーウィンの思想」感想(2)

内井惣七の「ダーウィンの思想」の第4章は、 ダーウィンの「分岐の原理」の解説である。 分岐の原理についてのダーウィン自身の説明は見通しが悪いため、 内井は分岐の原理の再定式化を試みているが、 それは次のようなものである。 (D1) どんな種も、そ…

内井惣七「ダーウィンの思想」感想(1)

先日も少し触れた内井惣七の「ダーウィンの思想」(岩波新書)を読んだ。 コンパクトにまとまっているが、 それが故にある程度ダーウィン本を読んだ人にとっては 目新しい情報や分析がある訳ではないし、 ダーウィン以降の進化論とか進化生物学にほとんど触…

今西錦司はダーウィンの「分岐の原理」を知っていたか?

最近出版された内井惣七の「ダーウィンの思想」を購入した。 まだパラパラ眺めている段階で、まだきちんとは読んではいないが ちょっと気になる箇所があった。 それは「分岐の原理」について書かれた4章の末尾で 「わが国では、かつて、「種の棲み分け」とい…

奴隷解放のために科学理論が必要なのか?

一昨日に「ダーウィンが信じた道」に否定的に言及したが、 katsuya-440.hatenablog.com 読む気があまりしない理由をもう少し書いておいた方が良いだろう。 奴隷制を否定するために進化論を研究したのであれば ダーウィンは立派な人物ではないかというという…

ダーウィン崇拝は宗教に近いかも

今朝の読売新聞の書評で、 A.デズモンド&J.ムーアの「ダーウィンが信じた道」が取り上げられていた。 実は先日本屋に行った際にも見掛けていたのだが 個人的にはダーウィン本にはいささか食傷気味ということもあって ちょっとパラパラと見ただけで購入はし…

覚えています

自分が学生時代に太田朋子・遺伝研名誉教授に、身の程知らずの質問をしたことを少し書いたが、その時にした質問の一つが、「分子時計に見られるように分子レベルでは、ほぼ一定速度で進化するのに対して、 断続平衡説で言われているように表現型レベルでは進…

ピーター&ローズマリー

第26回京都賞が昨日発表されたが、 http://www.inamori-f.or.jp/ja_kp_lau_yea.html 青色ダイオードの赤崎勇と並んで 進化生物学のグラント夫妻の名前を見て、 「京都賞は良い仕事してるよなぁ」と思った。 グラント夫妻のような長年に渡る地道な実証研究を…

ほぼ中立説、ブルーバックスになる

うかうかしていて、 大田朋子「分子進化のほぼ中立説―偶然と淘汰の進化モデル 」(講談社ブルーバックス) http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2576376 が出ているのに気が付かなかった。 20年以上前になるが学生時代に、 セミナーに来ていた著…

集団選択(group selection)は間違いではない

先日、紹介したE.ソーバーは進化生物学における集団選択(群淘汰)を擁護する議論をしていることでも有名で、進化生物学者D.S.ウィルソン(最近「みんなの進化論」の邦訳が出た)との共著もある。ソーバー自身の議論は「進化論の射程」の第4章「選択の単位の…

ダーウィンを論じるための科学哲学

最近、E.ソーバーの"Philosophy of Biology"の翻訳 「進化論の射程-生物学の哲学」(松本俊吉、網谷祐一、森元良太訳、春秋社)がでた。 帯の宣伝文句に 生命科学が物理科学に代わって科学の主役に躍り出るに伴い、現代哲学の花形となりつつある「生物学の…

ダーウィンとバイオ・サイエンス

今日2月12日はチャールズ・ダーウィンの生誕200年だそうだ。 もちろんダーウィンの業績は非常に素晴らしいものであると思うが、 現代の生物学的研究のどのくらいの割合がその知的遺産を相続しているのだろう? もちろん嫡流である進化生物学は遺産の100%を…

A.ワイスマンの実験を振り返る

サイエンス・リテラシー云々で言えば、 実験のデザインの良し悪しを評価できることも重要だろう。 たとえ番組側に意図的な捏造がなくても、 TVの健康情報番組がアテにならないのは そこで行われる実験の大部分が デザインの悪いことから判断できるはずだ。 …

「フィンチの嘴」を読んで、あるいは我等の時代の進化論

J.ワイナー「フィンチの嘴-ガラパゴスで起きている種の変貌」(ハヤカワ文庫NF)を読んだ。 ガラパゴス諸島のダフネ島を中心にグラント夫妻によって行われた ダーウィンフィンチの自然選択に関する実証的な研究を紹介したもの。 丹念で息の長い調査によって …

"adaptive radiation"って

仕事の関係で"radiation"というと、ついつい「放射」って思ってしまうため、 "adaptive radiation"って言葉を見たときに最初何のことかわからなかった。 ひょっとするとごく低容量の放射線を浴びた方が健康だっていう 放射線ホルミシスの別名かとも思ったけ…