地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

素人には日本語の解説書を

D.ボウイの傑作アルバム"ジギー・スターダスト"の最初の邦題は
「屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群れ」という、
それはそれで味があるのかもしれないが物凄いものだったそうだ。
原題は"The rise and fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars"
直訳すれば「ジギー・スターダストとスパイダーズ・フロム・マーズの興隆と凋落」くらいか。
固有名詞ジギー・スターダストを「翻訳」してしまい、この迷邦題が生まれたのだろう。
どこまで自覚して迷訳が行われたのかは知らないが
よく知らない分野の英文を読むときには似たような早合点をして
ぶっ飛んだ解釈をしている危険がつきまとう。

自分は英語が決して得意ではないが、
大学生だったころ先生達に
「教科書は翻訳でなくて原書を使え」と言われたものだ。
そりゃ順調に理系の(分野によっては文系でも)研究者の道に入れば、
英語の論文を読まなければならないし
論文は英語で書かなければならないのだから、
原書で読んで英語に慣れておいた方が良いにきまっている。
さすがに自分の専門分野の周辺だったら英語の論文を読めないということは無いが
専門外だと専門書でなくても挑むのは物凄く難しい。

分野によって同じ単語がかなり違った意味で使われているのは珍しくないから
基本的な概念についてある程度の理解が出来ない状態で原書に挑むのは
沢山の「屈折する星屑」を撒き散らす危険性が極めて大きい。
また分野が異なると意味の重なりがあるものの定義がずれている場合もあって
下手をすると中途半端に意味が取れるので、
判ったような判らないようなお経を読んでいる状況になりかねない。
だから、
翻訳を読んでも判らなかったカントの哲学書を原書で読んだら判った式の話は
その分野の専門家ならともかく畑違いの人が言っている場合には半信半疑だ。
(当該の翻訳書が「屈折する星屑」まみれだったのかも知れないが、、、、)

異分野の人間は皆素人なのだから
日本語で読める初等的な教科書や解説書は有難い物だと思う。

★2006/1/12追記

本記事はstochinaiさんのブログサイト「5号館のつぶやき」の
2006年01月06日付エントリ「他山の石 」
http://shinka3.exblog.jp/3326339
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