地獄のハイウェイ

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マタイ効果

科学において「富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる」こと、
今風に言えば勝ち組と負け組の格差がどんどん拡大することを、
自己流に「研究費のマルコフニコフ則」と名付けていた知人がいたけれど
科学社会学の分野では「マタイ効果」(Matthew effect)と呼ばれる。

これは新約聖書の「マタイ福音書」の中の文言に因んでR.K.マートンが提唱したものである。
だからバッハの「マタイ受難曲」を「マシュー受難曲」と呼ばないように
日本では「マシュー効果」と言わずに「マタイ効果」と呼ぶのが普通である。
マートンの原典は
Merton, R. K.“The Matthew Effect in Science”Science,157,56-63 (1968)
これは幸いにことにネットでも読むことが出来る。
http://www.garfield.library.upenn.edu/merton/matthew1.pdf

マートン科学社会学の父とも言うべき存在で
科学者集団独自のエートス(倫理観)として
普遍主義、公有性(共有主義)、利害の超越、系統的な懐疑主義といった
4つのエートスの存在を指摘したり、
(但しこのようなエートスはもはや存在しないとの批判はある)
近代科学の成立へのピューリタニズムの関与を示唆した
ウェーバーマートン・テーゼの提唱などの業績がある。

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本記事は
Makkurikuriさんのブログサイト「ある大学研究者の悩み」
2006年03月14日付エントリ「研究資金の分配」
http://makkuri.exblog.jp/3338601/
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