地獄のハイウェイ

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ノーベル化学賞雑感

報道によると2006年度のノーベル化学賞
ロジャー・コーンバーグに決まったそうだ。
「真核生物の転写の分子的基礎に関する研究」で受賞だそうだ。
これって明らかに生物分野の研究テーマではないだろうか。
そう言えばここ数年、
ノーベル化学賞は生物分野での研究が対象になっているものが多い
例えば2004年度のA.チカノーバー、A.ハーシュコ、I.ローズらが
「ユビキチンが仲介するタンパク質分解の発見」でノーベル化学賞
その前年の2003年度のP.アグレとR.マッキノンが
「細胞膜に存在するチャネルに関する発見」でノーベル化学賞
そのまた前年の2002年度がJ.フェン、田中耕一、K.ヴュートリッヒで
「生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発」で受賞。
生物と関係ないような化学分野では受賞が難しくなっているのがなんとなくわかる。
学問分野としての化学は、
ある意味で曲がり角に来ていると言えるのかもしれない。

因みに今回受賞したコーンバーグは、
1959年にノーベル生理学・医学賞を受賞したアーサー・コーンバーグの長男だそうだ。
報道では親子で受賞は今回で7組目という。
有名なところではピエールとマリーのキュリー夫妻(マリー・キュリーは2度受賞)と、
その娘であるイレーヌ・ジュリオ=キュリー(こちらも夫婦で受賞)がいる。
キュリー夫人ことマリー・キュリーは子供向けの伝記の定番なので
一般世間でもこの親子受賞のことはかなり良く知られている。
ところが、今回のコーンバーグの受賞に関して
ある分子生物学者の柳田充弘がその個人ブログで
「親子というのは、記憶にケースがおもいだせません。ブラッグは親子でしたか?」
などど書いているのを見て思わず仰け反ってしまった。
科学者としての業績と科学史の知識は必ずしも関係ないだろうが、
他の研究分野には全くの無関心で教養を欠いているのだとしたら、
ちょっとゾッとするではないか。

誰でも知っているような科学に関する雑学的知識を欠いていては
科学研究の面白さを一般市民に伝えることは困難だろう。
何故なら、暗黙裡に
「自分の専門分野以外は興味がない、面白いと思ったこともない」
というメッセージを発信しているのも同然だからだ。
このようなメッセージが、
科学の魅力を伝えようとしたときに、
どれほどネガティブに作用するか
理解するのが難しいというのなら、
例えば、ボクシングの魅力を伝えようとしたときに
ライトフライ級しか興味がない、面白いと思ったこともない」
というメッセージを発することを
想像してみれば良いのではないだろうか。