地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

専門家への敬意を欠くべからず

数年前にちょっとした流行になった本に
進化生物学者ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」というのがあった。
歴史に科学的(進化生物学が中心)で斬新な知見を導入したとして好評だった。
一部の進化論ファンの間では、人文系の既成学問である歴史学に対する
自然科学的思考法の優位を例証するものとして受け取られたりしていたようだ。
そのあたりのやや行き過ぎた過大評価のようなものに
胡散臭いものを感じて読まずにいたのだが、
たまたま、zepさんと言う方の「世界史の授業」というブログサイトの記事を見て
http://blog.so-net.ne.jp/zep/2006-03-12/ )
W.H.マクニール の「疫病と世界史」と
A.W.クロスビーの「ヨーロッパ帝国主義の謎」が
元ネタであったらしいことが分かった。
もう少し調べると一橋大の斎藤修教授も同様の指摘をしていることが分かった。
http://www.lib.hit-u.ac.jp/service/tenji/takamoto/tz/tz-008.pdf
ダイアモンド本人は参考文献にそれらを挙げているけれど
邦訳では参考文献が割愛されているため
日本人の読者にオリジナリティーが誇張されて受け取られた面もあるようだ。

しかしプロの歴史研究者の中に類似の発想が全くないと早合点するのは
ちょっと専門家に対する敬意が欠けているのではないだろうか?

自然科学系の研究者やファンの一部の間では
「人文系の研究者やファンには自然科学への理解がない」
というような軽やかな敵意というか侮蔑が見られるが
逆に他分野の専門家に対する敬意が欠けているのは
お互い様なのかもしれない。