地獄のハイウェイ

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ダーウィン崇拝は宗教に近いかも

今朝の読売新聞の書評で、
A.デズモンド&J.ムーアの「ダーウィンが信じた道」が取り上げられていた。
実は先日本屋に行った際にも見掛けていたのだが
個人的にはダーウィン本にはいささか食傷気味ということもあって
ちょっとパラパラと見ただけで購入はしなかった。

どうやらダーウィンの進化論には反奴隷制や反人種差別といった
政治思想的動機に基づく部分が大きかったというような話らしい。
それはそれで科学史家の興味のあることだろうけれど、
進化論についての興味というよりはダーウィン個人に関する興味だろう。
もしも仮にダーウィン奴隷制支持者であったら自然選択説は生まれなかったのか?
また政治的にリベラルでなかったとしたら一般向けの書物になったか?

ダーウィンがリベラルで善なる動機を持っていたことを強調することが
プラスに働くという判断が関係者になくはないのだろうな、と思えてしまう。
ダーウィンのいとこのF.ゴルトンが人間の品種改良を目指した優生学の祖であることが
ネガティブな印象を与えているのを打ち消すような素敵なエピソードに見えてしまう。

その本の内容とは直接的には関係ないが、
ダーウィン研究本というのはダーウィンの偉大さを讃える傾向が強くて
自分にとってはマルクス研究本と同じような匂いがするのだ。
仮にダーウィンが悪人で性格破綻者だったとしても
自然選択説の科学的栄光は少しも翳るところはないはずだ。
ダーウィンその人を顕彰することへの熱心さは
自分には宗教的情熱の類似物に見えて仕方がない。