地獄のハイウェイ

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ポスドク経験者をリエゾンに活用する案

先日、
アカデミアから民間企業への方向転換の場として
研究生制度というもののデザインを試みてはどうかと書いたが、
あれから少し考えてみたものを書いてみる。

ポスドク問題については色々言われているが、
アカデミックポストに就けないまま、
歳を重ねてしまった場合に焦点を絞ろう。

ポスドクといっても色々あるが
代表的なポスドクである学振の特別研究員は
34歳未満でないと応募できないし、
他のポスドクでも35歳以下というところが多いようだ。
だから35歳を越えてしまうと任期終了後に
ポスドクを続けることは非常に難しくなる。
また助教の公募も35歳以下となっている場合が少なくない。
このあたりの事情については「博士の生き方」というサイトの
次のページが参考になる。
http://hakasenoikikata.com/posdoc_report17.html
同サイトにも記述されているが
民間企業に就職するにしても35歳以上になると
極端に難しくなると考えて間違いない。
http://hakasenoikikata.com/posdoc_report31.html
35歳までは大丈夫だということでは決してないが
失業対策が必要な優先順位は35歳以上だと考える。

どうしても研究生活が長いと、
民間企業に就職するにしても、
それまでの研究を活かした就職をしたい、
という気持ちになるのは分かるが、
それでは同じ分野の新卒博士や若いポスドクとの競争になるので
35歳を越えてしまったら方向転換も必要ではないか。
つまりそれまでの専門に拘らない覚悟が必要になるのだろう。

だから専門から少々ずれていても仕事をこなせるように、というか
色んな業種の専門的な知識や
業界との人脈を作っていくなんていうことが
大事なのではないだろうかと思った。

そういうことを考えながら
vikingさんの「博士をどのようにして「世間に出す」べきか:先日のエントリの反響を受けて」
http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=1111
というエントリの中の


「そういった経験豊富な企業人の方々に、大学の側が「社会人大学院」という形で専門の学識を提供する代わりに、ドクターやポスドクたちがベンチャーや産学協同事業を興すのをアドバイザーなどの形で手助けしてもらう」


という提言を見て思いついたのだが、
逆にポスドク経験者を大学のリエゾンオフィスとかの
産学連携機関の非常勤相談員か研修生にするというのはどうだろう?

パートタイムでも相談員をやったり相談員のアシスタントをやれば
企業からの実際の共同研究等の問い合わせに対応したりして
知財関係とかについての知識を齧らざるを得ないし、
また自分の専門と多少離れていても技術移転等の実際に触れるのは
なによりも研究成果を社会に還元する貴重な経験となるはずだ。
そこで自分の研究の方向性と企業ニーズとのマッチングを見直したり
業界に人脈を作ったりできれば理想的ではないかと思う。

そこでもう少し具体的に考えてみよう。
まず募集対象を35歳以上のポスドク経験者に限定する。
それからこの種の業務がいきなりこなせるとは限らないので
最初は研修を受けたりしながら
半年後くらいから本格的に活動するとなると
就活もそれ以降になるだろうから
1年任期では厳しすぎるので、任期は2年間にする。
業務でない個人の研究活動などを拘束しないため
(他学での研究生の身分取得を妨げないため)
フルタイム雇用ではなく非常勤というのでどうだろう。

それでは、
ざっと予算規模について試算してみよう。
2006年3月卒の初任給は経団連の調査では
技術系大卒の場合206,413円だそうだから、
それと同程度で賃金は月額20万円。
すなわち1人当たり1年間で240万円の人件費。
調査費(旅費含む)を1人当たりの年間60万円で
それらに間接費を25%分を加えて
1人当たり400万円の予算として考えてみる。
仮にこれを全国20拠点に各20人ずつ採用するとなると
(年間400人しか手を差し伸べられないが)
拠点当たり8,000万円で予算総額は16億円となる。

比較のために平成18年度の予算額を調べてみると
振興調整費の新興分野人材養成プログラムについてみると
科学技術インタープリター養成プログラム(東大)が8,200万円、
科学技術コミュニケーター養成ユニット(北大)が9,500万円、
だから拠点当たりは無難な規模であろう。
また、キャリアパス多様化事業は3億7000万円で、
産学官連携活動高度化促進事業(コーディネーター事業)は10億400万円。
両事業を併せたものよりも少し大きくなるが、
決して無茶な規模ではないのではないか。
新規事業として予算提案してみてはどうだろうか。

文科省でも文教族議員にでもツテがある人は
この案を流用して提案してもらっても全く構わないです。


※2007年7月20日追記

色々と調べてみると、
九州大学知的財産本部のリエゾン部門が
企業との個別連携契約でポスドク等の雇用を掲げていました。
自分が考えていたのとはちょっと違いますが
先行している実例として挙げておきます。
http://imaq.kyushu-u.ac.jp/add/liaison01.html