地獄のハイウェイ

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高い競争率は望ましいのか?

ポスドク問題では
多くのポスドクがアカデミックポストに就職できず
路頭に迷っていることが問題視されている。

これは見方を変えれば、
アカデミックポストはポスドクの中から
高い競争率で選抜されているとも言える。

高い競争率によって優秀な人材が選抜できる、
優秀な人材を集めるには競争率が高いほど望ましい、
という発想は大学関係者に限らず、
世の中で広くかつ根深く蔓延している。

例えば日本学術会議がまとめた
「これからの教師の科学的教養と教員養成の在り方について」でも
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-y1.pdf

これまで日本の教師の資質と能力の高さは、教員採用競争率の高さと給与の高さという二つの基礎によって支えられてきた。しかし近年、この二つの基礎はいずれも崩壊している。

といった文章に見られるように、
高い競争率による優秀な人材の選抜という発想だ。
因みに上記の引用のすぐ後に

小学校教員の採用競争率は平成13 年には平均12.5 倍であったが、5年後の平成18 年には平均4.7倍に低下した。団塊世代教師の大量退職に伴って都市部を中心に大量採用時代へと突入し、平成18 年度における東京都小学校教員の採用倍率は2.1倍まで低下した。

といった文章があるので、それから見る限り、
優秀な人材を集めるには競争率2.1倍ではダメダメで10倍以上が望ましいと
日本学術会議は考えているようだ。
つまり優秀な人材を集めるためには
10人中9人までが競争で脱落するのが望ましいと考えているらしい。
これが過酷かどうかは見る人によって違うだろうが、
こういう発想が学界の中枢にある限り
ポスドクがアカデミックポストを獲るには
高い競争率というか高い脱落率を覚悟しなければならないだろう。