地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

市民の科学

アカデミックな科学者集団にとって最大の資金供給者(パトロン)は誰かと問えば、
それは政府あるいは国家だということになるだろう。
実際、国立大学や政府系研究機関(国研とか独法)に所属する研究者は
国家の予算から給料や主たる研究費を受取っているわけだ。
また民間企業というか経済界は
現在の政治を動かす主たる政治勢力である以上、
民間企業の利害と国家の利害に一致する点(例えば産業の振興)が多いので
民間企業に属する職業的研究者も
アカデミックな研究者と利害が大幅に異なるということは多くはない。
だからというわけではないが、
アカデミックな研究者にとって外部に向けての最大の宣伝文句は
「国の発展を支える」となるわけであるし
国家を批判する場合も「科学技術立国とは名ばかりか!」と
国家のパトロネージュの貧困への不平の形をとることが多いのだろう。

そうなってくると国家やあるいは経済界とは対立しがちな政治勢力
例えば各種の市民運動などは
アカデミックな科学者にとって
顧客ではないどころか利害の相反する部外者となりがちなわけだ。
だからというわけではないだろうがSTS系のものを除いて、
ネットでの科学コミュニケーションに関する議論では
例えばサイエンスカフェなどに関する言説では
市民運動を支援するようは方向の議論は余り見られない。
そこに中心的な問題意識としてあるのは
趣味として科学に関心を持つようなファンであるとか
あるいはファンになってくれそうな層への
アピールに関するものなりがちだ(もちろん例外もある)。
科学をどう理解してもらうかとかの話題が中心で
市民運動に科学がどう関与するかというような議論は
極めて少ないような気がする。

しかし例えば環境問題や医療問題に関する各種の市民運動では
専門的知識を欲しがっているところも少なくないのだから、
そういうところに協力する(同時におかしなところには協力しない)というのは
市民との科学コミュニケーションのあり方として
もっと真剣に論じられても良いような気がする。