地獄のハイウェイ

科学・技術や趣味のことなど自由気ままに書き散らしています。

役に立たなくても面白いものを

基礎科学に優秀な人材が集まらないと、
日本の産業の未来がないとか国際競争力が保てないとか、そういう議論がある。
この議論には暗黙裡に、基礎研究→応用研究→開発研究という
イノベーション論で言うところのリニア・モデルが前提とされている。
リニア・モデルはアカデミック科学に対して
国家予算の支援を導く上で非常に影響力があったが
しかし現在ではリニア・モデルの終焉が言われているのだから、
少し古めかしい道具立てに立脚していると思う。
(参考ページ:http://www.kousakusha.com/ks/ks-t/ks-t-5-52.html
だから自分は基礎科学への国家予算の投入の欠如が
直ちに産業の衰退に結びつくかのような論調には賛成できないし、
実際のところバブル崩壊以前の日本は「基礎研究ただ乗り」で叩かれながらも
経済的繁栄を謳歌することが出来たわけだ。
かつてとは経済状況が異なるので日本経済が再浮上するかどうかは分からないが、
基礎科学の振興こそが日本の産業競争力の源泉かのような議論は
もうやめにした方が良いのではないかと思う。

それではどういう根拠で基礎科学の振興を訴えたら良いのだろう?
凡庸かもしれないが自分は、
一般国民の理解を求めるには科学の面白さに訴えるべきだと思う。
奇麗事かもしれないが、
役に立たなくても面白そうと思ってもらえることだと思う。
ニュートリノの質量がゼロでないことを実証して、
ノーベル物理学賞の有力候補といわれていた戸塚洋二さんが亡くなったとき、
各種のマス・メディアが取り上げていたことからわかるように
日本国民が産業に役に立たない基礎科学に興味が無いわけではない。
ニュートリノ実験施設の評価を最低ラインの「C」にランクしてみたり(2003年)と
国民ではなくて政府の方が金儲けに繋がらない基礎科学に興味が無いのだろう。
政府に働きかけるより国民に面白さを伝える努力をした方が、
理解を得られやすいのではないかと思う。